フリーランス

実は、ある人の「追っかけ」をしている。
なんと1週間の間に、長野日帰りと奈良へ1泊、を強行した。
直前に決めて実行したので、我ながらこのフットワークはなかなかのものだったと思う。

追っかけの相手は、まだここでは明かせないのだけれど、
(仮にSさんとする)取材で出会い、すっかりその人柄と実行力に圧倒されてしまい、
サトル君とふたりで「追っかけ」を始めることに決めた。
取材、ということだ。

Sさんの仕事場面を撮影すべく、長野へ行き、奈良へも足を運んだ。
奈良でのSさんの仕事は、ある伝統行事を下支えするもので、
Sさんは職人集団の親方という立場だ。
現場には、NHKテレビや地元の奈良放送局、奈良新聞の記者さんらもいた。
そこは一般の人が入れない場所だ。
事前に、Sさんを取材したいので私たちもその場に入れてもらえますか、と先方に電話を入れていた。
前日には現地入りし、先方の担当者に挨拶もした。
なにしろ、私たちはフリーランスのライターとカメラマンだ。
Sさんを追っかけてはいるけれど、まだ発表の媒体は未定である。
怪しいものではありません、ということを、まずは会ってアピールせねば、という思いもある。

なんだか、昔を思い出した。
おべんとうの取材をスタートしたばかりの頃だ。
今でこそ全日空機内誌「翼の王国」で連載しています、と言えば相手はわかってくれるけれど、
取材を始めた頃は、掲載の媒体など決まっていなかった。
「取材させてください」という熱意を、どこまでわかってもらえるか、にかかっていた。
取材をお願いする時だって、必死だった。
「どちらの、阿部さんですか?」と先方に聞かれる。
最初のうちは、えーっと、あのー、フリーのライターなので、もごもごもご・・・と焦っていた。
いつだって、ただのアベナオミでやっていかなくちゃいけない。
○○新聞の、とか、NHKの、なんて言えたら、どんなにいいかなあ、なんて思ったりもした。
相手はきっと、おお、NHKですか、となるだろうから。
立派な所属先、肩書がある人が羨ましいと内心思っていた。

でも、いつからだろう。
そういう考えが消えた。
フリーランスの自分は、なんだか居心地がいい。

奈良のSさんの現場で、
NHKと奈良テレビのカメラマンが、いろんな角度から映像を撮っているところを見た。
サトル君も、くるくると場所を変えてはカメラを構えていた。
新聞記者とテレビのディレクターは、現場のSさんを何とか捕まえて話を聞こうと頑張っていた。
私自身は、そのタイミングでSさんに話を聞く必要はなく、
仕事場面をじっくり見せてもらうことが目的だったので、みんなを見ていた。
(普段は席を同じくすることがない報道の人たちの動きと仕事内容が気になって面白くて、
そちらにも興味津々だったのだ)
みんなが一生懸命自分の仕事をして、報道の皆さんは先に帰っていった。
このあと、原稿を書いたり映像を編集する仕事が待っていて、時間との勝負なのだ。

あとで、ネットでニュース番組をみた。
新聞記事もアップされていた。
なんとも、早い。それがニュースというものだから当然か。

どの媒体も、事柄を同じように伝えていた。
限られた文字数、時間、のなかで伝えることとなると、そうなるのだろう。
重要ポイントと思われることをおさえて、事実を的確に伝えるニュースの場合、
媒体は違えど横並びになるのか、と思った。

私など、そういう現場ではつとまらないだろうな、と改めて思った。
わざわざ現場に行って取材をするのに、
型にはまった事柄しか伝えられない(それを求められている)のは、何とももどかしい。
正直なところ、私はニュースのその向こう側のことのほうが気になってしまう。

Sさんは、とてもユニークな経歴の持ち主だ。
だから私たちは追っかけをしているわけだが、
その場にいた報道のみんなは、Sさんのことを知らない(だろう)。
Sさんたちが、夜中の3時に地元を出発して、
6時間運転し続けてトラックで奈良に到着したことも知らない(だろう)。

Sさんを知ろうとしなくても、その日の取材は成り立つからだ。
でも、私はたぶん、そういう仕事はできないのだと思う。

今、フリーランスの私は、立場上は相当不安定だ。
でも、限られた時間で効率よく仕事しろよ、と怒る人はいない。
すべては、私次第。
ペースはのろいし、できることも多くはないけれど、
それが私だし、フリーランスだからできることだ。


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# by naomiabe2020 | 2022-10-08 18:38 | ライターの仕事 | Comments(0)

納豆好きなひと

3連休のまんなか、朝寝坊した朝。
台所で、サトル君がなにやら始めていた。
納豆づくり!

どうりで昨晩、ボウルの中に青い豆が浸してあったのよ。

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蒸した大豆と、煮沸消毒した藁(わら)。
納豆菌は、煮沸しても死なないとのこと。(お強い)
この藁は、相撲の土俵を編む長野県飯島町の酒井さんのところの藁です。
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大豆を藁で包んだら、湯たんぽを入れたクーラーボックスの中へ。
保温すること、18~20時間。
さて、発酵はうまくいきますか・・・・・。
明日の朝、どうなっているか楽しみ。




# by naomiabe2020 | 2022-09-24 17:13 | 食べること | Comments(0)

至福のとき

台風が通過したばかりの九州へ行ってきた。
天気予報で、台風の輪っかの行方をひやひやしながら見守り、
何とか、飛行機のルートには問題なさそう、とわかった時の安堵・・・・。

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佐賀の、とあるジャズ喫茶。
80歳の店主は、ジョン・コルトレーンの話題になると目を輝かせて話が止まらない。
いや、コルトレーンばかりじゃなく、
「ジャズに関することなら、ずーっと喋り続けてとまらないのよ」と奥さま。
3日間通い、さらにもっともっと、通いたくなる場所だった。

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これは、東京・神田にある「ポルトガル菓子」のお店のもの。
おいしい。
もう、その言葉に尽きる。
また食べたくて、うずうずしている。

どちらも、店主の情熱がハンパなく、
その場に足を踏み入れると、心がノックアウトされたかんじになった。
すごい出会いに恵まれた1週間だった!








# by naomiabe2020 | 2022-09-23 15:49 | ライターの仕事 | Comments(0)

おお、相撲!

おお、相撲!_c0402074_13544503.jpg
相撲の番付表!
(7月の名古屋場所のもの)
こういうものを、皆さんはどこで手に入れるのか。
相撲ファンには定期的に送られてくるものなのか(雑誌の年間購読みたいに?)
相撲のチケットを買うと、もれなく付いてくるものなのか、
そんなことさえ知らなくて恥ずかしいのだけれど、
先日、これをいただいた。
独特の文字。
faxを受けとる時に、焦って紙を引っ張ってしまって、
うにょーっと文字が引っ張られた時みたいだ。
番付け表の一番下の序の口の力士名は、
老眼鏡をかけても、判読不可能。
そこがまた、職人技な感じで、
これを書く人がいるのだなあ、とぼんやり考えていたら、
朝日新聞で「角界余話」という連載が始まった。
なんと、どんぴしゃり、番付表のことが書いてある。
ひとりの行司が1週間以上自宅にこもって書き上げるとのこと。
あれ? そもそも、行司ってどういう人のことだっけ、
と、相撲音痴の私はグーグルで調べて、「はっけよい、のこった」の掛け声の方とわかった。
連載記事が面白いのだ。
「序の口の髪の毛のように細い文字は、細筆の毛がすり切れて何本しか残っていないようなゴミ筆で書くんです」
という、36代庄之助コメント。
ゴミ筆! 

この36代庄之助の山崎さん(74)は、中学3年生の12月に大ファンだった力士に会わせてやると言われて、
巡業先に出かけて行ったら、会えなかったばかりか、行司さんのところに連れていかれて、
気づいたら「行司内定」をもらっていたという。
断るつもりが、学校の集会で校長先生から「山崎君は行司さんとなり、これから厳しくてつらい修行に入ります」と紹介されて
引くに引けなくなってしまった。

なんということだろう。
いろいろな人生があるものだなあ。

番付表が、なんだか一層趣のあるものに見えてきた。
一部、55円。
あれ、想像よりもずっと安い。

どうして、相撲に疎い私が・・・・・といえば、
なんと、相撲の土俵を編む人を先月取材したからだ。

長野県上伊那郡の飯島町で「合同会社わらむ」という会社を立ち上げた、
酒井裕司さん。
お盆の時期、藁でせっせと俵(こも)を編む酒井さんを目の前で見ていたので、
あの時の俵が、今テレビで放映されている秋場所の国技館の土俵になっていると思うと、
なんともいえない気持ちだ。
相撲の取り組みよりも、足元にばかり目がいってしまう。


















# by naomiabe2020 | 2022-09-23 14:47 | ライターの仕事 | Comments(0)

大学生の夏休み

アマゾンプライムで配信がスタートしたのを知って、
小躍りしたのが、つい最近。
「This is us」シリーズ6 全部観てしまった。

この夏、娘の帰省がなくなり、
母さんとしては、表向き理解を示しつつ、
内心、ちょっとやさぐれた気持ちだったので、このドラマがあって良かった。
毎日、夕飯の後の2話ずつの楽しみ。
登場人物、ひとりひとりの人生にフォーカスしているから、
ドラマの中のみんなが、身近で愛しい存在に思えて、
すっかり自分がアメリカ人で、あそこで暮らしているみたいな気持ちになっていた。
それはサトル君も同じようで、
あの場面がさー、としょっちゅう振り返るのだけれど、(振り返るのが好きな人)
どうしても、レベッカとかケビンとか、英語圏の人名が覚えきれていないようで、
会話はいつも、こんがらがる。

そんな数日間も終わってしまった。
最高に好きなドラマだったのに。

というわけで、夜寝る前にまた本を読むことにした。
「破れ星、流れた」(倉本聰 著)幻冬舎
まだ途中だけれど、
「北の国から」の純くんは、まさに倉本少年だったのだなあ、と知る。
自身の子ども時代を振り返る随筆で、
戦争も、その後の混乱期についても、さすが倉本聰! といちいち唸ってしまうような文章。
好きなのだ。本当に、どうしようもなく倉本さんの作品が好きだ。
ああいう人が育った家庭はどんなだったんだろう、とずっと興味があったことが、書いてある。
おやじさんが、面白い。
東大受験8回目でやっと合格した中野さんとか、倉本家に関りのある人たちが面白い。

でも、思う。
実際は、どんな人でも個性派だ。
みんなその人の人生を生きていて、事件も起これば悲惨なこともあるし、抱腹絶倒のおもしろさだってある。
ただそれを、どうとらえるか。
倉本少年は、じーっと観察していたんだろうな。
人というものについて、観察を重ねていたんだろうな。
そうせざるを得ない気質、感受性があったんだろうな。

「北の国から」の熱狂的なファンだった私は、
大学2年の夏休み、ひとりで北海道を一周する旅に出た。
9月をまるまるあてた。
行き当たりばったりで、ユースホステルと、とほ民宿に予約を入れて泊まり歩く旅だ。
当時の北海道は、(今はどうなのかな?)一人旅天国だったので、
毎日が出会いの連続だった。
礼文島の桃岩ユースでは、ドラの音と八代亜紀の舟歌の大音量で朝起こされた記憶がある。
えりもユースでは、夕飯の後に「岬めぐり」の歌を歌いながら、変なふりつけの踊りをみんなで踊った。
礼文島をほぼ丸一日かけて歩いたり、
羅臼岳を登山してみたり(かなりハード!)
なんであんなに体力があったんだろう、と我ながらびっくりする。
旅の途中で、早大生のタカヤマ君と出会い、
富良野で「北の国から」めぐりをしたのだった。
自転車をレンタルして、「そうた兄ちゃんの牧場」とか「純がUFOを見た丘」とかを
地図を見ながらせっせと走った。

あの夏は、今思い返しても最高だった。

・・・・・なーんてことを、倉本さんの本を読みながら思い出していたところ、
娘から写メが届いた。
「羊の解体しました」
「今日は、朝4時半起きで海に来てます。鮭を釣った!」
北海道を旅している娘からのメール。
なんだかとっても、羨ましい。

母さん、父さんも好きなことをして生きてきたから、
帰ってこい、なんて言いませんとも。
言えないよなあ、と思っている。
ただ、親になってみると、ちょっとね、さみしい。
年末の楽しみにとっておこう。
































# by naomiabe2020 | 2022-09-09 11:41 | 家族のこと | Comments(0)

フリーライター阿部直美のブログ。カメラマンの夫とともに、「お弁当」を追いかけて日本全国を旅しています。日々のちょっとしたことを綴るブログです。


by 阿部直美