自分の書いたものに、目を通している。
初校、再校、とこれまで2回、校正者さんが原稿を見てくれて、
これは3校目、最後のゲラチェック。


初校、再校の時、編集者のUさんと一緒に、
1ページずつめくりながら、言葉を確認し合った。
校正者さんの指摘、私が入れた赤字、Uさんの疑問、
それを、ちゃんと反映できるように、Uさんが丁寧にゲラに書き込んでくれた。
これまで、ずっとひとりで机にかじりついてきた。
仕事机の窓から見える、お隣りさんの柿の木を、いつも眺めてきた。
「あとがき」原稿であたふたしていた頃、新緑になり、
気付けば今、青々と茂っている。
この木は、秋になるとたんまりと実がなって、
鳥が来て実をつつく。紅葉して、散って・・・
それを、何度も何度もひとりで眺めながら、やっと書き上げた原稿だ。
いったい、何年越し?の初めての、書下ろしエッセイ。
自分自身の、これまでのことをようやく文章にできた。
ずっとひとりで、悶々と書いてきたものを、
編集者のUさんが同じ側にきてくれて、手を入れる作業を一緒にしてくれる。
本を作るなかで、何よりも幸せを感じる段階だ。
「キャンディーバー」って書いたけれど、それって何かわかります?
スニッカーズとかのことだけど。
え? キャンディーかと思った。飴じゃないの?
じゃあ、チョコレートバーってしたら、イメージつきますかねー。
そういうやりとりだって、嬉しいのだ。
どこに「、」を入れるか、
「かわいそう」を、漢字の「可哀想」にするか、
「達」は「たち」とひらがなで統一するかどうか。
ページをめくって、言葉の断片から思い出したことを振り返って、
Uさんと共有する。
そういう時間が、幸せだ。
なぜなら、ずっとひとりで書いてきて、何もかも自分の中に閉じ込めてしまっていたから。
孤独で、ある意味不安で、本当にこれを本にする意味ってある? と思えてくるから。
5月28日刊行の予定が、コロナの影響で6月11日刊行に。
岩波書店から「おべんとうの時間がきらいだった」
家族についての、記録。