昨日は、「お弁当甲子園」の審査で鎌倉女子大学へ。
大船駅から、徒歩10分ほどのところにある。
大学のある場所は、もともと「松竹大船撮影所」だった所で、
「男はつらいよ」シリーズは、ここで撮影された。
そんな広い敷地に移転してきた鎌倉女子大は、建物じたいとても贅沢なつくりだ。
天井が高くて、大きな窓がふんだんにあって、
しかも、奥の庭園の緑が窓一杯に広がって見える。
(裏山が森のようだ!)
居心地いいのだ。
お弁当甲子園の審査員をさせてもらうようになって5年。
毎年、審査の日と表彰式の日の2回、普通なら入ることができない大学を訪れるのが楽しみでたまらないのは、
この贅沢なローケーションのせいもある。
ああ、でも今年は、いつもとちょっと違う。
学生の姿がなかった。
それでもって、いつもなら審査の前に大学やスクールパートナーズの担当者の皆さんと昼ご飯をご一緒して、
いろいろおしゃべりするのが楽しいのだけれど、
今年はそれがなかった。
コロナのせい。
審査じたいは、いつものように進んだ。
前もって、サトルさんも私も30名ずつを選考。
鎌倉女子大の先生方3人も、同じように30名ずつをあらかじめ選考。
当日は、そのなかから、最優秀賞1名、優秀賞2名、入選5名、佳作10名を選んだ。
今年から、特別審査委員賞ということで、私たちが選ぶ2名も加わった。
机の上にずらーっと作品が並び、
「このアイデアは、面白いですねー」
「これって、どんな味なんでしょう?」と言い合いながらの選考。
今年の応募は、コロナでどうなるかと危惧したが、
なんと7,0000点を超える数で、過去最高だった。
北海道から沖縄までの応募があって、男子も奮闘している。
審査で感じたこと。
お弁当は、力作が多かった。
力作すぎて、作るのに半日はかかったんじゃない? くらいの凝ったものもあった。
普段から料理をやっている子は、弁当にもそれが表れているし、
これまで料理なんてやったことがない、という高校生が、
この機会に、すごく頑張って作った弁当だというのも見て取れた。
ただ、このコンテストでは、おべんとうのほかに300文字の文章も選考対象で、
私はやっぱり、この文章がなにより気になる。
300文字。
これって、なかなか悩ましい文字数である。
はっきり言えば、お弁当はひとそれぞれ違うのに、
文章は同じになっちゃうんだよなあ、というのが正直な感想。
誰のために作る弁当か。どんなところに気を配って作ったのか。
タイトルは「弁当に込めた思い」である。
例えば、こんなかんじ。
仕事で忙しいお父さんに作りました。
忙しすぎてちゃんと昼を食べていないお父さんが、夏バテしないように
お肉をがっつり入れて、野菜もとってほしいから野菜も入れました。
実際に弁当を作るのは大変で、お母さんはすごいと思いました。
お父さんが喜んでくれてよかった。
みたいな流れになる。
今年は、コロナで会えないおじいちゃん、おばあちゃん、
単身赴任をしていて、今までのように家に帰ってこられないお父さん、という内容もあって、
胸が痛くなった。
でも、状況は見えてくるのだけれど、
いまひとつ、「顔」が見えてこない。
お父さんは、どんな人なのかな。
お父さんの仕事のことを、何か知ってるのかな。
家での食事の時は、どんなふうなんだろう。
ハンバーグが好きだから、入れました。だけでは、やっぱり見えてこない。
いちいち、読みながら突っ込みを入れてしまう。
もうちょっと、教えて欲しい。
もうちょっと、詳しく書いてよ。
たった300文字だけれど、実はいろいろ伝えられるはずなのだ。
それって、普段の観察じゃないかな、と思う。
読みながら、お父さんの顔が浮かんでくるようだと、
それは、読んでいてすごく面白くなる。
作った本人との関係性まで見えてくると、
もっと面白くなるんだよなあ。
なにか具体的なもの、が欲しい。
ああ、でも私が高校生だった頃を思えば、
原稿用紙1枚を埋めることが、果てしなく遠い道のりに思えたっけ。
えー、こんなに書くの? 書かなきゃだめ? と。
ただ今回、なかには勢いのある文章もあって、
伝えたい気持ちが文字にそのまんま表れていた。
そういうのを見ると、ほっとするし、にやり、としてしまう。
文章は、うまい、へた、じゃないと改めて思う。
今年は、表彰式が行われない。
ああ、なんて残念なんだ。
いつもは、弁当の作品から「作り手」を想像して、
実際に表彰式で会って、「おお、なるほど」とか「あれ、意外!」とか、
嬉しいご対面となるのだ。
実際に話をすると、お弁当の裏側に実はいろいろあることがわかってくる。
すごい工夫があったり、文章に書いていないエピソードがあったり。
その時間が、何より楽しみだったのに。
高校生のみなさん、たくさんの応募ありがとうございました!