エビフライのつくりかた

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阿部家のある日の、おかず。
エビフライ!
サトルさんは、誕生日の日などの特別な日には、たいていエビフライをリクエストする。

ははは、しかし、これは違いますぞ。
食品サンプルでございます。

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今発売中の、「暮しの手帖」8号にて、
「わたしの仕事」を連載中。

今回は、食品サンプルの「佐藤サンプル」で職人歴62年の後藤さんに登場いただいた。
62年の間には、サンプル業界の大変革があり、
初期は蝋細工だったのが、今は塩ビ製に変わった。

エビフライを実際に作っていただいたのだが、
衣の花を咲かせる時、ヒートガンというものを絶妙に震わせながら、
本物そっくりに仕上げていく。

この取材は、2日がかりで行うのだが、
1日目にインタビュー、2日目は丸一日の密着、というかたちになる。

インタビューの日、後藤さんが相当古い「暮しの手帖」を持って現れた。
確か、私が生まれる前か、その後くらいの号(!)だったと思うが、
「以前も暮しの手帖に出たことがあるんですよ」とおっしゃる。
そこには、若かりし頃のハンサムな後藤さんのお姿が。
暮しの手帖社の料理スタジオで、親子丼を作ったとのこと。
蝋細工の時代だ。
初代編集長の花森さんにもお会いしましたよ、と。
なんとまあ、すごい!
時代をまたいで、2回目の登場だ。

その時のページをちょっと読ませてもらったら、
蝋で作る親子丼の手順が、実に細かく丁寧に文字になっていた。
あの時代、カセットテープもなかっただろう。
全部、その場で聞き取って書いたものに違いなく、
思わずため息がでてしまった。

今の時代の私には、強い味方のICレコーダーがある。

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このお弁当は、2年前に東京都美術館で「おべんとう展」があった時、
サトルさんの写真を展示したブースに置いておいたもの。
この時も「佐藤サンプル」さんに作っていただいたのだった。
米の粒が光っている。

これを手にしてから、うちに来た人何人かをだました!















# by naomiabe2020 | 2020-10-08 16:17 | ライターの仕事 | Comments(1)

お弁当甲子園 審査の日

昨日は、「お弁当甲子園」の審査で鎌倉女子大学へ。
大船駅から、徒歩10分ほどのところにある。
大学のある場所は、もともと「松竹大船撮影所」だった所で、
「男はつらいよ」シリーズは、ここで撮影された。

そんな広い敷地に移転してきた鎌倉女子大は、建物じたいとても贅沢なつくりだ。
天井が高くて、大きな窓がふんだんにあって、
しかも、奥の庭園の緑が窓一杯に広がって見える。
(裏山が森のようだ!)

居心地いいのだ。

お弁当甲子園の審査員をさせてもらうようになって5年。
毎年、審査の日と表彰式の日の2回、普通なら入ることができない大学を訪れるのが楽しみでたまらないのは、
この贅沢なローケーションのせいもある。

ああ、でも今年は、いつもとちょっと違う。
学生の姿がなかった。

それでもって、いつもなら審査の前に大学やスクールパートナーズの担当者の皆さんと昼ご飯をご一緒して、
いろいろおしゃべりするのが楽しいのだけれど、
今年はそれがなかった。

コロナのせい。

審査じたいは、いつものように進んだ。

前もって、サトルさんも私も30名ずつを選考。
鎌倉女子大の先生方3人も、同じように30名ずつをあらかじめ選考。
当日は、そのなかから、最優秀賞1名、優秀賞2名、入選5名、佳作10名を選んだ。
今年から、特別審査委員賞ということで、私たちが選ぶ2名も加わった。
机の上にずらーっと作品が並び、
「このアイデアは、面白いですねー」
「これって、どんな味なんでしょう?」と言い合いながらの選考。

今年の応募は、コロナでどうなるかと危惧したが、
なんと7,0000点を超える数で、過去最高だった。
北海道から沖縄までの応募があって、男子も奮闘している。

審査で感じたこと。
お弁当は、力作が多かった。
力作すぎて、作るのに半日はかかったんじゃない? くらいの凝ったものもあった。
普段から料理をやっている子は、弁当にもそれが表れているし、
これまで料理なんてやったことがない、という高校生が、
この機会に、すごく頑張って作った弁当だというのも見て取れた。

ただ、このコンテストでは、おべんとうのほかに300文字の文章も選考対象で、
私はやっぱり、この文章がなにより気になる。
300文字。
これって、なかなか悩ましい文字数である。

はっきり言えば、お弁当はひとそれぞれ違うのに、
文章は同じになっちゃうんだよなあ、というのが正直な感想。

誰のために作る弁当か。どんなところに気を配って作ったのか。
タイトルは「弁当に込めた思い」である。

例えば、こんなかんじ。
仕事で忙しいお父さんに作りました。
忙しすぎてちゃんと昼を食べていないお父さんが、夏バテしないように
お肉をがっつり入れて、野菜もとってほしいから野菜も入れました。
実際に弁当を作るのは大変で、お母さんはすごいと思いました。
お父さんが喜んでくれてよかった。

みたいな流れになる。

今年は、コロナで会えないおじいちゃん、おばあちゃん、
単身赴任をしていて、今までのように家に帰ってこられないお父さん、という内容もあって、
胸が痛くなった。
でも、状況は見えてくるのだけれど、
いまひとつ、「顔」が見えてこない。
お父さんは、どんな人なのかな。
お父さんの仕事のことを、何か知ってるのかな。
家での食事の時は、どんなふうなんだろう。
ハンバーグが好きだから、入れました。だけでは、やっぱり見えてこない。
いちいち、読みながら突っ込みを入れてしまう。
もうちょっと、教えて欲しい。
もうちょっと、詳しく書いてよ。

たった300文字だけれど、実はいろいろ伝えられるはずなのだ。
それって、普段の観察じゃないかな、と思う。

読みながら、お父さんの顔が浮かんでくるようだと、
それは、読んでいてすごく面白くなる。
作った本人との関係性まで見えてくると、
もっと面白くなるんだよなあ。

なにか具体的なもの、が欲しい。

ああ、でも私が高校生だった頃を思えば、
原稿用紙1枚を埋めることが、果てしなく遠い道のりに思えたっけ。
えー、こんなに書くの? 書かなきゃだめ? と。


ただ今回、なかには勢いのある文章もあって、
伝えたい気持ちが文字にそのまんま表れていた。
そういうのを見ると、ほっとするし、にやり、としてしまう。
文章は、うまい、へた、じゃないと改めて思う。

今年は、表彰式が行われない。
ああ、なんて残念なんだ。
いつもは、弁当の作品から「作り手」を想像して、
実際に表彰式で会って、「おお、なるほど」とか「あれ、意外!」とか、
嬉しいご対面となるのだ。
実際に話をすると、お弁当の裏側に実はいろいろあることがわかってくる。
すごい工夫があったり、文章に書いていないエピソードがあったり。
その時間が、何より楽しみだったのに。

高校生のみなさん、たくさんの応募ありがとうございました!















# by naomiabe2020 | 2020-10-02 13:34 | ライターの仕事 | Comments(2)

新米だ!

新潟の足立照久さんから、新米が届く。
こしひかりを10㎏、お願いしたのだ。

足立さんは、長岡市で代々続く「ふるい屋」の11代目。
普段は、ふるい、裏ごし、せいろなどをひとりで作っている。
JRの会員誌「ジパングクラブ」で手仕事の連載をやっていた時の、連載最後の取材がこの足立さんだった。
(書籍化した「手仕事のはなし」(河出書房新書)にも登場!)

足立さんとは、その後もメールを通してのお付き合いが続いていて、
あの取材の日にお会いした、ちっちゃな娘さんたちが大きくなった姿を見て、
親戚のおばちゃんのように、嬉しい気持ちになったりしている。

足立さんは、いつも忙しい。
なぜなら、ふるい職人として日々木のまげわと奮闘するほか、
地元の消防団の集まりとか、お寺の集まりとか祭りとか、
地方で暮らす若手は、役割がいっぱいあるようだ。
それに加えての田んぼ仕事。
先祖から受け継いだものを守るって、大変だ。
大変だけれど、日本の多くの地域では、みんながそうやって暮らしてきたんだよなあ、と思う。
「美しい田園風景」と言うけれど、これは個人の農家さんたちが、
そんなに広くはない自分のところの田んぼで、米作りを続けてきたからこそ、の風景だもんなあ。

足立さんちの田んぼは、山間にあるらしい。
ブログに出していいよ、と言っていただけたのでこちら。
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そして、昨晩の我が家の食卓。
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炊き立てご飯と豚汁、秋サケのムニエル、ぬか漬けでござる。
サトルさんは、昨晩はノーアルコールデイ。(週に2回、やめている!)
みずみずしくて、生命力あふれる米!という感じ。
母から半分分けてもらったぬか床も、ほどよく私風に馴染んできた。
ご飯がとまらない。

足立さんは、電子レンジでも使える「わっぱせいろ」を作るのだけど、
スツールやオブジェも作る。
これが、おしゃれ!
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新潟にお住まいの方は、ぜひ!






# by naomiabe2020 | 2020-09-29 10:09 | 食べること | Comments(0)
鎌倉女子大学主催の「お弁当甲子園」は、今年で第9回目。
私たち夫婦は、2016年の第5回から、審査員のお仲間に入れてもらっている。


これが、本当に楽しい。
今年もまた選考の季節がやってきて、この連休中はひたすら夫婦ともども「作品」と向き合っている。

内容は、高校生が自分で作ったお弁当の写真と、300字以内の文章の構成。
誰のための弁当なのか、タイトルもつけてもらう。
献立も記載。

1枚の用紙のなかで、どこまでを伝えることができるか、である。
学校によっては、家庭科の先生が課題のひとつとして、参加を促しているケースもあれば、
個人的に応募してくるケースもある。
前は、アメリカ在住の高校生が応募してくれて見事入選した。

2016年の応募総数は、5,073作品。年を追うごとに応募数は増えてきたが、
さてコロナ禍の今年はどうなるだろう、と気を揉んでいたところ、
なんと、過去最高の7,000作品を超えたとのこと。

最初の選考を終えたものが、私たちの手元に届く。

まず、一言でいえば、どの弁当も私が作る弁当よりもずっと手が込んでいて、
見た目も素晴らしくて、たぶんすごく美味しいはず。
だって、力が入っているもの、みんな。
私が、いかに手抜きをしようかと思って作る朝の弁当とは、ちと違う。

時々、目を凝らして「献立」欄を確認。
高野豆腐の肉巻き、とあって、ただの肉の塊じゃないんだ、と気づく。
高野豆腐の汁が、じわーっとしみ込んだ感じ、あの食感を想像したりする。
大葉のしいたけチーズつくね、とあるけど、うん?
つくねの中に、大葉とシイタケを入れてチーズは・・・ああ表面に見えるぞ。

300文字の文章も、とても大事だ。
サトルさんは、献立(写真)のほうにまずは目がいくのだが、
私は文章の部分が何より気になる。

短い文章で、何かを伝えようとするのは本当に難しいのだけど、
目に浮かぶ、何か具体的なことが書いてあると、ぐっと心が動かされる。

今年はやはり、コロナ禍にある、という状況を感じさせるものが多かった。
忙しく働くお父さんやお母さんを心配する気持ち、
兄妹のがんばりを応援したい気持ち、
高校生なりの、精いっぱいの思い。読んでいて、急にほろりとしてしまうこともある。

お腹がすいた。
あまりにもたくさんの弁当を見たなかで、
急に、メンチカツが食べたくてたまらなくなった。
しかし、今晩は「さんま」である。
今年、初のさんま。ちょっと値段が下がったので、昨日買っておいたのだ。












# by naomiabe2020 | 2020-09-22 16:27 | ライターの仕事 | Comments(2)
キミはもしかして・・・・_c0402074_15051694.jpg
雨上がり。ふと、玄関わきのプランターを見たら、なんとまあ。
キミたちは? もしかして、ゴーヤかい?
この夏、プランターの中は春に植えた名前を知らない花が、大きな株となって茂っていた。
ほぼ干からびた頃、処分。(忙しくて、手が回らなかったのよ。言い訳)
だからここは、空っぽのはずだったのだ。
ここにゴーヤを植えたのは、去年だったか。
しかし、肥料と手入れ不足で実がなった記憶がない。
それが、このタイミングで発芽?
どこまでいけるか。
なんだか、いとおしい。

# by naomiabe2020 | 2020-09-18 15:15 | 日々のこと | Comments(2)

フリーライター阿部直美のブログ。カメラマンの夫とともに、「お弁当」を追いかけて日本全国を旅しています。日々のちょっとしたことを綴るブログです。


by 阿部直美