歩く派なもんで

私は、歩く派だ。
コロナで体がなまってきた皆さんが、にわかに走り始めているけれど、
私は、断固歩くのだ。
子どもの頃から、走るのがきらいだ。お腹が痛くなるし、具合が悪くなるし。
楽しみがわからない。

さっきから、うえっ、うえっ、と喘ぎながら走る若者がいる。
窓のむこうから、響いてくる。
昨日は、午前中だった。
今日は、夕方。
ほぼ毎日、走る彼。

彼は、これまで公園の中のトラックを走るのが常だったのだけれど、
コロナで公園内が閉鎖になってから、路上で走る。うちのわき。

いがぐり頭で華奢な体つきの青年は、いつだって本気の走りで、
ぶっ倒れる寸前、みたいだ。
うえっ、ひえっ、ぎょえっ、ああっ、ああっ、と、とにかく喘ぐ。
(スピードをあげているのだ)

ちょっと怖い。
知らない人が普通に歩いていて、この声が背後からきたら、引くと思う。身構える。

不思議な走りだ。
頑張っているのはよくわかるのだけど、聞いていると、息が苦しくなって心がざわざわしてしまう。
毎日頑張っているし、応援したいところだけど、
なぜだか、無理しなさんな、と言いたくなってしまう。

前にトラックを走っている時、お母さんらしき人が、タイムウォッチを持って「がんばってー」と声をかけていた。
熱血おかあさん、の姿はその後もちょくちょくあって、すごいなあと思っていた。

今も、道のどこかに立っているのだろうか。
親子は、何を目標にここまで走り込んでいるのか知りたい。
果たして、競技会場で、あんなに喘いでもいいのかしら。

あああっ、あああっ、の後に、ひえーん、のような倒れ込むような感じの響きも加わった。
なんだ? ゴールを路上に設定したのか?

もう、気になって気になって仕方なし。

私は、歩く派だ。
こんな苦行より、景色を見ながら歩くのだ。










# by naomiabe2020 | 2020-06-01 18:37 | 日々のこと | Comments(1)

表紙のこと

本の表紙をどうしようか、というのは最高にわくわくする作業だ。

例えば、「おべんとうの時間」(木楽舎)シリーズの場合は、弁当を食べる人のポートレート写真がどかーんと一面にくる。
「手仕事のはなし」(河出書房新社)では、福島県で張り子人形を作るアサさんの写真。
座布団の上にちょこんと座って、人形つくりをする94歳のアサさんは、その存在感がすごかった。

つまりこれまでの本は、阿部了の写真ありき、で表紙が決まった。

しかし今回は、エッセイだ。
「好きにしていいですよ」と岩波の編集Uさんに言っていただき、
さて、私はどんな本が好きだったっけ? と考えた。
本屋に行って、平積み本を片っ端から見る。
改めて表紙ばかりを見ていると、これが好き! というのが案外見つからない。
インパクトはあるな、とか、面白いデザインだな、とは思っても、それ以上ではない。

じゃあ、普段私はどんな本を手に取るんだろう?
なんか、目が合う本っていうのがあるのだ。
手にとってぱらぱらっと見たくなる本。
でもそれは、好きなタイプの絵やデザインっていうわけでもない。

「おべんとうの時間がきらいだった」が、新刊のタイトルだ。
ひとつ言えることは、「べんとう」を表紙にしないこと。
これだけは、最初から決めていた。

好きなもの、好きな雰囲気・・・・・と考えていて、
酒井駒子さんの本を見つけた。
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彼女の描く絵は前から好きだったけれど、あらためて見ると、
彼女の描く少女や少年が好きだと思った。

実は、今回の新刊エッセイに関して、表紙に写真を考えたことがなかった。
それまでに出した本が、ごく当たり前にサトル君の写真が表紙だったせいもあって、
今回は、読み物として違うものにしたかった。

絵がいいのかな、じゃあどんな絵? と考えるうち、
私がイメージするのは、結局は少女なのだった。
女の子。つまり、それは私だ。

そんな時、「娘さんの写真は?」と、Uさんから提案され、
おおっ!と思った。
そうだった。そうだった。実はそれが、あったっけ。

べんとう旅を一緒にしてきた娘。
よちよち歩きの時から、いつも旅巡業は一緒だった。
彼女の姿は、かつて少女だった私にもだぶる。

というわけで、表紙まわりは写真となった。
決まってみると、なるほど、この本にはこれだったな、と思う。

今週、表紙の色校が出て、ようやく新刊の顔が見えてきた。
あと一歩。







# by naomiabe2020 | 2020-05-22 16:12 | ライターの仕事 | Comments(0)

新刊のこと

6月に岩波書店から出る新刊の案内が届く。
「おべんとうの時間がきらいだった」6月11日発売予定。
新刊のこと_c0402074_11050800.jpg
実は、5月号の新刊案内にも掲載されている。
本当は5月27日刊行の予定だったので。
その時は、井上ひさしさん、沢木耕太郎さんの間に挟まれていた。
なんとも、恐れ多い!
コロナの影響で、急きょ出版が延期となり、
6月号の案内では、お隣りさんがダニエル・エルズバーグ氏。
無知すぎる私は初めてお聞きする名前だったが、
世界で最も有名な内部告発者、核戦争計画者とのこと。
これまた、すごい方だ。(勉強せねば)

ようやく昨日、表紙まわりの色校が出て、
最終段階に入る。
写真の色合いがちょっと気になるので、
再校を出してもらうことに。
ひとつひとつ、の作業がうれしい。
もうすぐだ。









# by naomiabe2020 | 2020-05-20 11:30 | ライターの仕事 | Comments(0)

志々島の磯の香り

香川県の志々島に、大好きな人がいる。
Tさん、という元花農家さん。私の母より、もう一回り上の世代の女性。

たまーに、電話がかかってくる。
「ながとも、出てたなあ」というのが、開口一番。
夫が、サラメシに出演した翌日あたりに、「見たよ」と知らせてくれるのだ。

おべんとうの取材で、もう何年も前に島にお邪魔した。
その時、斎藤工のファンだというTさんに、「僕は、サッカーの長友に似てるって言われることもあるんですよ」
と、なんともずうずうしいことをサトル君が言い、
「あれえ、そういやあ、そう見えなくもないねえ」みたいに、Tさんはノッてくれた。
以来、「ながとも、出てたなあ~」と、テレビで見た時などに電話をくれるようになった。

最近サラメシに出ていないので、心配してくれてたみたいだ。
(3月に入っていたロケはキャンセルになり、以来このコロナ騒ぎでサトル君の出る撮影は行われていない)

そのTさんから、ソラマメと魚の一夜干しが届いた。
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この魚はサヨリで、1年に10日くらいの間、スズキに追いかけられて、
島の近くにやってくるそうだ。
「雨が降ったみたいじゃった」
「もう、おもしろうておもしろうて、息子と一緒になっておっきな玉で掬ったんじゃ」とのこと。

玉で魚をすくった、というのだから、すごい。
昔、旦那さんが亡くなる前は、夫婦船で魚を捕っていた。
だから、魚のことはよく知っているのだ。

Tさんが、夢中で玉ですくった魚。
火であぶって食べると、ちょうどいい塩加減、磯の香りがした。
ソラマメも、おいしかった。

週に一度、船に乗って買い物で出る時だけ、
気合を入れてマスクをするそうだ。
元気でいて欲しい。
会いたいなあ。



# by naomiabe2020 | 2020-05-15 14:05 | 食べること | Comments(3)

なぜか4時

こちら、我が家のリビングの時計。
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4時に見えるが、4時ではない。
この時、午後1時〇分。

いつも、あせる。
午後1時になると、タターっと針が急いで動き出して4時でストップ。
このまま、しばらくしてから、急に思い立ったように通常運転を始める。

電波時計、困ったもんだ。
普通は、夜中にこれをやるんだろうか。

前に時計屋さんに修理に出して、
戻ってきた日から、このような動きに。

午後1時5分を確実に知りたい人にとって、
この時計は全くの役立たずだ。

でも、なんだかかわいい。
けなげ、にも見える。
娘は「4時で止まるなんて、不吉すぎる~」と言うけれど。




# by naomiabe2020 | 2020-05-12 14:13 | 日々のこと | Comments(0)

フリーライター阿部直美のブログ。カメラマンの夫とともに、「お弁当」を追いかけて日本全国を旅しています。日々のちょっとしたことを綴るブログです。


by 阿部直美