気づいたら、インタビューを生業としていた。
話を聞いて、文章にする。
子どもの頃から、文章を書く人になりたいと漠然と思っていたけれど、
物語を作り出す作家の素質なんて自分にはないのがわかっていたから、
じゃあ自分は何を書けるんだろう? とぼんやりと考えていたのが、たぶん小学校の高学年。
こういう道があったんだ、と今さら驚いている。
私はとてもラッキーだった。
この仕事をしていると、出会いが次々とやってくる。
というか、出会うために、日々人探しをしているのだけれど、
毎回、雲をつかむようにして、「誰か」を捜し求めて、
よし、この人のところへ行くぞ、と決めたら、
飛行機、新幹線、レンタカー、時には船にも乗って、
とにかく、まだ会ったことのないその人のもとへ行く。
毎度、冒険みたいな感じだ。
そして、時間をかけて話を聞いている。
今は、喫茶店の連載もあれば、仕事の話を中心にインタビューをすることもある。
でも、私の原点はやっぱり「おべんとうの時間」だ。
取材内容が「おべんとう」というのは、
そこから家族の話、子どもの頃の話へといくらでも芋づる式に広がっていくことが許されていて、
初対面の人に、かなり立ち入った話を聞くことにもなる。
そういう特別な時間を過ごすと、
その人のことが忘れられなくなることがしょっちゅうある。
香川県・志々島で暮らすタカコさんも、そういう特別な人で、
ずっと会いたくてたまらなかった。
取材は10年も前。
花農家をしていたタカコさんは、
ずっと一緒に花を育ててきた大好きなお父さん(夫)を亡くして、
寂しいんよ、と言いながら、お父さんとの思い出話をいっぱい聞かせてくれた。
いつも海苔巻きを作って、お父さんと一緒に畑でかじっていたそうだ。
その日も、大きな木の根っこのところに腰かけて、太巻きをがぶり。
私たちのために、茶粥を用意してくれて振舞ってくれた。
大きなスイカを、タカコさんと一緒にかぶりついた。
取材の後、大荷物を運ぶ私たちを見て、
「車を出してあげる」と言うから、
え? タカコさん、この小さい島で車を運転してるの?
と驚いていたら、
「これがあたしの車」と、手押し車を出してくれたのだった。
取材の後も、春になるとソラマメを送ってくれた。
お礼の電話で、元気な声を聞けるのが嬉しかった。
先週、喫茶店の取材で四国へ行ってきた。
徳島と香川のお店、2軒をめぐる旅で、
もし時間に余裕ができたら、タカコさんに会いたいなあ、と密かに思っていた。
ちょっとした和菓子を羽田空港で買っておいて、
渡せなかったら自分で食べればいいや、と。
でも、現地で志々島へ行く定期船の時刻を調べてみたら、
ちょっと行って帰ってくる、というのは難しいことが判明。
(船に乗っている時間は20分くらいなんだけど・・・)
残念だけど、仕方ない。
・・・・・
おお、ところが、なのだ。
なんと、タカコさん自身が定期船で
三豊市の船着き場まで来てくれる、ということに!
定期船は、島からやってきて、5分後にはまた島へ戻る。
その5分のために、わざわざ会いにきてくれるというのだ。
サトルくんとふたり、誰もいない静かな船着き場のベンチに座って待っていた。
志々島の住民は、10数名しかいない。
その船は、住民にとっては命綱みたいな大事な連絡船だ。
ほんの数分のことだったけれど、
顔を見て、元気な姿を確認できて、
もうそれだけで、十分嬉しかった。
なんだろう、この気持ち。
取材で過ごしたのは、ほんの1日のことなのに、
こんなにも、記憶に残っていて今につながる一日だったと思うと、
人との出会いって本当に凄いな、と思う。

タカコさん、91歳です。
私はこういう出会いに本当に恵まれている。
ありがたいなあ。
そうそう、志々島は春、すごいことになっているのだ。
タカコさんと息子さん夫婦が、「天空の花畑」を作って、
毎年、春は観光客がわんさか訪れるそうだ。
もともとは花の島だった志々島。
私も、その季節にぜひとも志々島に行かなくちゃ、と思っている。

こちらの写真は、おまけ。
朝、まだ真っ暗な時間に「コケコッコー」の大合唱で目覚める。
なんと、自由気ままに神社の境内をコッコ、コッコと歩きまわる鶏さんたちを発見。
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