おべん党サミットの報告

■12月14日(土)

午前7時、車に写真パネルやカレンダーを詰め、浜松へ向けて出発。
途中、爆睡。
しょぼつく目を無理やり開ければ、雪を被った富士山。
隣は、運転しながらおにぎりを頬張るサトル君。

12時、浜松のイベント会場「キッチンCramet」に到着して、
迎えてくれたタマミと一緒に、まずは昼を食べに行く。
連れていってもらった天丼屋には痺れた。
カウンターだけの、かなり年季の入ったお店で、
大将はグラグラの油の中に、手をジャボっと入れていた。
甘じょっぱいたれに絡んだエビ天も良かったし、
とろける半熟卵が最高。

Crametに戻って、写真パネルを展示する。
壁に立てかけるように置いていく。
写真を映写するスクリーンを広げて、ちゃんと写真が見られるかを微調整。
Crametは、ガラス張りの箱なので明るく開放的な反面、映写したものが見えるかが心配だった。
スクリーンの後ろに黒い幕を張ってみよう。
おお、いける、大丈夫。
そんなふうに、翌日の準備を進める。
その日、会ってすぐにタマミが
「とうとう始まったね~。始まっちゃうと、
あとは終わりに向かっていくって感じがして、寂しいよ」
と言った。
本当にその通りで、楽しみにしていることって、
実際に始まってしまうと終わりへのカウントダウンに思えてしまう。

このイベントは、今年の春くらいには動き始めていた。
タマミが企画を練って、浜松のトートバッグ専門ブランド「ROOTOTE(ルート―ト)」の村上さんや、
地元の大手書店「谷島屋」さんに声をかけて協賛をお願いし、
チラシもタマミ自らが作ってくれた。
この数か月、ズームやメールで、何度も何度もやりとりをした。
(いつも話はずれて、近況報告になっていく)
タマミは、あっちこっちの人に声をかけまくり、
チラシを置いていただき、そこからまた別の人につながって、
すごく大きな人の輪ができていったのだ。

「イベント前の一週間は、ほんと、ふわふわしちゃってたんだよ、あたし」
とタマミ。
「車で走ってて、インターの出口間違えちゃったし、別の曜日に歯医者と内科の予約を入れてたんだけど、
歯医者に行ったら、あれ?今日じゃないって大慌てしちゃったし、
夜寝てても、”はい、わかりました”とか、喋ってるらしいんだよね」
おお、たまみよ。私も同じ。
パスポートぼけぼけ事件(事件じゃないけど)をやったから。
イベント前の彼女の一番の心配事が、
”声がかれて、出なくなっちゃったらどうしよう”だったと聞いて、
本当にもう、じーんとくる。

■12月15日(日)
「おべん党サミット」朝から晴れ。
10時40分過ぎくらいに会場に到着すると、
谷島屋さんが、入口に販売用の書籍を並べてスタンバイしてくださっていた。
奥の厨房では、皆さんに配るおにぎりセットが並んでいた。

11時開場で、続々と人が集まってきて、
本やカレンダーを買ってくださった方に、サインをする。
いつまでたっても慣れない「サイン」。
しかも、ステキなおべんトート(バッグ)にペンで名前を書くなんてこと、
本当に? 本当にいいの? という気持ち。
サトル君は、いつの間にか自分のサインをあみだしていて、なんだかそれっぽいが、
私のサインは、クレジットカードの時のサインと代わり映えせず。
だから、サインとなると、ちょっと申し訳ないような恥ずかしいような気持ちが抜けず、
名前の横にスマイルマーク的な絵を添えて、それで許してね、とお茶を濁している。
あの絵は、それこそ、アメリカ留学時代に年がら年中タマミと手紙のやりとりをしていた時に、
彼女が描いた絵だったと認識している。
「え、そうかなあ?」と本人は言うのだけど、私の中ではタマミの絵をぱくっているつもり。
サインをするたび、アメリカと10代の自分を思い出すから。

12時、トークセッションはじまる。
会場スペースが、人でいっぱい。
ほぼ満席という50人くらいが、丸椅子に腰かけてこちらを見ている。
前列の人とは、握手のできる距離だ。
さあ、スタートです、という段になって、
「サプライズの人に会った?」とタマミに言われて、へえ? と客席を見る。
な、な、なんと、「すっぱいカレンダー」のデザインをしてくれた、
デザイナーのフミカさんが、黒い帽子を被ってちょこんとはじっこに座っていた。
「ちょっと寄ってみました」と。(岡山の山の上のぶどう畑に在住)


サトル君とは、おにぎりの話から始めよう、と決めてあって、
「俺が先にひとくち食べたほうが、みんなも食べやすいだろうから」と、
私たちも、まずはおにぎりをひとくち食べようね・・・・なんて言っていたけれど、
そんな余裕はなし。
始まったらそこからは、一気に走った。

すべて終わった今、断片的な場面が突然おりてきて、
その都度、ひゃーっとなっている。
ああ、言葉が足りなかったな、あの話までしたかったな、
はしょってしまったな‥‥等々。

小笠原の母島へ行った時の話など、
写真のスライドをまじえながらお喋りした。

マイクを使ったものの、ほぼ地声でも聞こえる距離感で、
皆さんが笑ってくれると、こっちも嬉しくなり、
頷いてくれると、ちょっと調子に乗り、
サトル君は途中で、おべんとう甲子園の話をして感極まって男泣きをする。
お弁当を撮影する「4×5カメラ」を披露した時には、
皆さんがスマホでカシャカシャっと写真を撮って、その瞬間、
まるで記者会見会場みたいになって面白かった。

第二部は「読書会」
ワタクシの「おべんとうの時間がきらいだった」を読んでくれた方と、
共に過ごす時間。
ずっとやってみたかったのだ。
あの本を出した後、編集部を通して私宛に手紙を何通もいただいた。
本を読んで、自分自身と重ねて何かを感じた人が、
長い手紙を書いてくださる。
私の経験は、私だけのものじゃないんだなあ、ということを思っていたので、
もっと気軽に、読者と共有する時間を持ちたいなあ、と思ってきた。
たまみのおかげで、それが実現した。

参加してくれた皆が、ひとつの輪になって座り、
ひとりずつ、何でもいいから話してもらうことにした。

12、3名が参加してくれて、
親とのこと、子ども時代の運動会の出来事など、
それぞれの話に、みんなで耳を傾けた。

この日、たまたま集まった人同士が、
輪になって自分の話をする。人の話を聞く。
ただそれだけのことなんだけど、
私には、とんでもなく素敵なこと、に思えた。


打ち上げの飲み会まで開いていただき、
今日はとにかく、喋りに喋った。笑った。
店を出て空を見上げたら、きれいな満月。
この月を、ずっと忘れたくないなあ、と思った。

■12月16日(月)

会場に展示してもらった写真パネルを持って、
浜松駅の「MAY ONE メイワン」8Fにある谷島屋書店さんへ。
併設の「エクシオール カフェ」の壁面に、写真パネルを展示していただけるということで、
母島の凪穂ちゃんやジャイアンらの写真パネルを置いてくる。
ありがたや~。

車にすべてを詰め込んで、昼前に浜松を発つ。

たまみ、夫のいちさん、心からありがとう。
ルート―トさん、谷島屋書店さん、
お手伝いいただいたみなさん、
そして、わざわざ会場に足を運んでくださったみなさん、
ありがとうございました。
最高に幸せな時間でした!


































by naomiabe2020 | 2024-12-17 15:10 | 日々のこと | Comments(0)

フリーライター阿部直美のブログ。カメラマンの夫とともに、「お弁当」を追いかけて日本全国を旅しています。日々のちょっとしたことを綴るブログです。


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