16歳の夏、不安と緊張と寂しさとわくわくと、興奮と心細さと好奇心と。
あらゆる感情を抱えて、日本を発ってアメリカ・ベーカーズフィールドへ。
サンフランシスコ空港までは大勢の仲間がいたけれど、
そこで、みんながバラバラになった。
ベーカーズフィールド行きの小型飛行機に乗り換えたのは、私を含めて5人。
飛行機を降りる時にとった写真は、私の宝物だ。
タマミ、ミホ、モトナリ、ハヤト、そして私。
飛行機を降りると、それぞれが待っていてくれたアメリカのホストファミリーに連れられて家へ。
1年間の留学生活が始まった。
16歳でよくやったなあ、と今更ながら思う。
大冒険と言ってもいい。
あの時の経験は、「おべんとうの時間がきらいだった」の中で書いたけれど、
アメリカの(いや、たぶんカリフォルニアの!)ティーンエイジャーほどの最強種族に出会ったことは、
私のこれまでの人生でない、と言い切れる。
手強かった。
私はあの1年を、タマミがいてくれたから乗り切れた。
とにかく、喋りに喋った。
学校のこと、家族のこと。
喋るだけでは足らずに、手紙も送りあった。
でも、あの時代で良かったなあ、と今思う。
SNSがあったら、私は潰れていた。
日本とオンラインでつながっていたら、日本の友達の日常がオンタイムで見えてしまったら、
私みたいな弱虫は、完全にノックアウトだ。
ステキな留学生活をSNSで発信したくて、
でも、それができない自分を惨めに思って、私の苦悩は深まる一方だったろうなあ、と思う。
あの1年、電話さえほとんどかけなかった。
国際電話は高かったし、なにより、事前のオリエンテーションで
ホームシックになるから電話は控えるように、と言われていて、忠実に守ったからだ。
閉ざされていることは、悪いことばかりじゃない。
目の前にある現実を見るしかないし、
その世界でなんとかやっていくしかない。
必死にもがいて、辛くなったら、タマミにぶちまける。
一緒に走ってくれる友達がいたことが、どれほど心強かったか。
佐鳴湖の畔で、そのタマミと会えた。
タマミは今、浜松でチョコレートの店を持っている。
取材の帰り道、ほんのひとときだったけれどいい時間だった。
わーっと喋り、笑い合った。
私は、自分の娘にあえて英会話を習わせなかった。
英語塾もなし。
小学校の高学年くらいの学校の授業が、娘の英語スタートだ。
私自身は英語が大好きで、
ブリタニカの「モクモク村のけんちゃん」や「ガコとマコの冒険」シリーズを、
幼稚園の時から繰り返し見て聴いていた。
でも、娘には同じことはしなかった。
娘が興味を示したならば違ったけれど、
特に英語をやりたそうではなかったし。
私は、語学力ってそんなに大事かしら、とある時から考えるようになった。
娘には、英語の単語を覚えるよりも、日本語で表現できるようになって欲しい。
自分の言葉で、伝えられるようになって欲しい。
もっと言うと、誰かに伝えたくてたまらないもの、を持って欲しい。
それがあれば、英語だろうとポルトガル語だろうと、必死に覚えてしゃべるのだ。
まずは自分の中に、何があるか。
溢れる思いがあれば、それを伝える手段をひとは必ず見つけるものだ。
なぜそう思うかといえば、16歳の私には、なかったから。
あの時の私は、恐るべしカリフォルニアのティーンエイジャーたちを前に、
背中を向けて、縮こまっていた。
自分には何もない気がしていた。
まあ、子どもだから仕方ないのだけれど。
今の、おばちゃんの私は、英語力は16歳の時よりも劣りに劣っているけれど、
あの頃よりもたくさん喋るはずだ。
遠慮しないで、ずうずうしく、がんがん喋る。
へ? あんた、私が言ってること、通じないの? なんでよ、っていう勢いで。
なぜなら、喋りたいことがあるからだ。
伝えたい思いが強いからだ。
なぜ今、そんなことを書いているかというと、
タマミも同じことを言ったからだ。
「うちの子たち、中学が英語スタートだったんじゃないかなあ」と言うから、
同じ同じ! と。
「大事なのは、伝えたい何かがあるかってことだから」とタマミが言ったので、
そうそう! と私も言って、なんだか泣きそうになった。
タマミの勢いのある喋り方も、声も全然変わっていなくて、
一緒にいると、10代に戻ったみたいだった。
「ハヤトには嫉妬したよね」と、これもまた同じ。
ハヤトは、ひょうひょうとしていて、英語は全然上手とは言えないのに(ごめん)
YFUの留学生仲間が集まると(ドイツやスイスや各国の留学生がむこうで集まる機会があった)
人気者だった。
喋れなくても全然気にしてないし、彼がその場にいると、和む。
彼には彼なりの悩みがあっただろうけど、
あの性格は、羨ましかった。
ハヤト。
実は最近、うちの娘の”親知らず”を抜いていただいた。(らしい)
いまや、ハヤト先生、である。
まさかね、こんな日がくるとは。
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