歌うひと

ギターを抱えて娘が帰省した。
むこうで知り合った酪農家さんにいただいたというギター。
春に帰ってきた時も、ギターを持ってきた。
嬉しくてたまらないのだ。
春の帰省時は、「ねえ、聴いて聴いて」と弾いてくれたのが、
「うーさーぎー追ーいしー、かーのーやーまー」
ふるさと、だった。
ぽろーん、ぽろーん、と弦を弾きながら歌ってくれたのだけれど、
あれは、妙に暗かった。
しょうがない、なんせ「ふるさと」のあの音階だもの。

ところが今回は、あいみょんだ。
スピッツだ。
朝ドラでいつも聴いている「愛の花」を歌いながらじゃかじゃーん、とそれらしく弾いた。
「ロビンソン」「空も飛べるはず」
母ちゃん、感激。

娘の歌声が、好きだ。

思い返せば、いつも歌っている子なのだった。
保育園の頃だって、トイレの中から歌い声が聞こえてきた。
(CMソングとか)
小学生、中学生、高校生。
変わらず、鼻歌が聞こえてきた。
鼻歌って、いいもんだ。
不機嫌な時には出てこない。
いい気分の時のもの。
それって、人に伝播すると思う。

先日、久しぶりに小学5年生の姪っ子に会って、
「夏休みの宿題の自由研究はどうするの?」と聞いたら、
「今年はやらなくてもいい」との返事。
親のほうがほっとしてた。

あれは、娘が5年生の時だったんじゃないかな。
岩手の浄法寺へ行った。
夏は漆掻き(うるしかき)の季節。
器に塗っている「うるし」は、漆の木の樹液のことだ。
炎天下、漆の木一本ずつを回って、
細長い傷をつけ、ほんのちょっと染み出てくる漆の樹液を掻きとる。
そんな、漆掻き職人さんの取材だった。
夏休み中の娘も同行した。

夏の旅、といっても取材旅。
写真撮影だ、インタビューだと親ふたりは自分のやるべきことで頭がいっぱいだから、
小学生の娘は、臨機応変に時間をやり過ごさなくちゃいけない。
娘は、携帯電話もゲームも持っていなかったから、
自分で何かを見つけるしかない。
浄法寺の山の中で娘は歌っていた。
というか、歌を作っていた。
あまりにもヒマだったんだと思うけど、
ノートになにやら歌詞みたいなのを書いていて、ひとりで歌っていた。

それを、東京に戻ってから、私のインタビュー用のICレコーダーに録音。
CDに焼いて、学校に持って行った。
夏の自由研究として提出。
クラスメイトにも好評だったらしい。

この前ICレコーダーの中身を点検していたら、
この時の歌が出てきたのだった。
「ぽんぽんちゃら、ぽんちゃら」っていうサビがある。
けっこう、ノリがいい歌だ。

あっという間に、お盆も終わり、
娘は大学のある地方の街に帰ってしまった。
スピッツの「ロビンソン」をひとりで聴く。
さみしいなあ。
鼻歌が聞こえてこない家は、静かすぎるなあ。


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この夏に訪れた、畑。
上が紫蘇の畑で、下は藍(あい)の畑。
今回の台風の被害を受けていませんように・・・・・。












by naomiabe2020 | 2023-08-18 14:13 | 家族のこと | Comments(0)

フリーライター阿部直美のブログ。カメラマンの夫とともに、「お弁当」を追いかけて日本全国を旅しています。日々のちょっとしたことを綴るブログです。


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