頭痛持ちの更年期障害

それが姿を現した時、ついに来たな！と思った。

ようこそ、とさえ言いたい気分だった。

ヤツの名は、ホットフラッシュ。

この1、2年、体調がずっとおかしかった。

うまく言葉にできないけど、ヘン、という状態で、

自分では更年期に足を突っ込んでいるせいだと思っていても、誰もそれを「更年期です」とは言ってくれない。

婦人科に行って、「心臓がバクバクしちゃって」「頭痛が今まで以上に頻繁に起こって・・・」なんて訴えてみても、

医師（私と同年代の男性）は、パソコンに打ち込むのを途中でやめて、

「はあ」と魂が抜けたみたいな反応しかしない。

「ホットフラッシュはないんですかねえ。ホットフラッシュには、ホルモン療法っていうのもあるんですけどねえ」

ホットフラッシュがなけりゃ、更年期じゃない、とでも言いたげな、

ホットフラッシュ信者なのだった。

「まあ、漢方っていう手もありますからねえ」と言い、うーん、どれがいいんだろ、という感じで、

ツムラの漢方の冊子をぱらぱらっとめくった。

漢方って、そうじゃないだろう、と思う。

東洋医学なんだからさ、その人の脈とか舌とかお腹さわるとかして、

体質を見たうえで、どの漢方を処方するかを決めなきゃ意味がないんじゃないの？　と言いたい。

言いたいけれどぐっとこらえて、

「漢方はいらないです」とこたえる。

（その後、漢方を専門に処方してくれるおばあちゃん先生のクリニックを見つけて、

通うことにした。その先生は、最初に触診をして私の体質をみて「体力がないあなたにはこれね」

という処方をしてくれる。「漢方薬はね、味が変わったら次の段階にいくってことなのよ」とも言い、

毎回、「味はどう？」と聞く）

その婦人科では、先生に頼み込んでシールを貼るタイプの

ホルモン療法を始めてみたものの、

結局は頭痛がひどくなるだけで、すぐにやめてしまった。

今の時代、更年期障害のことをいろんな人が普通に語れるようになって、

いいなあ、と思う。

インタビューなんかを読むと元気が出る。

だよね、だよね、いろんな症状があるよね、と仲間を得た気分になる。

でも、婦人科の先生は、いろんな症状があるっていうことなんて興味がないらしい。

まあ、そんなこんなで、西洋医学は合わないみたいだから漢方でいくことにしたのだけど、

ここにきて、頭痛になる頻度がますます増えてきてしまった。

もともとの頭痛持ち。

私は人生のどれだけの時間を、悶え苦しみながら布団の中で堪えてきたことか。

というわけで、今月、ついに「頭痛外来」を受診。

人生初の「MRI]も受けて脳の中を覗き、

心臓バクバクもますますひどくなったので、「ホルター心電図」なるものもやった。

（心臓の横に小さい機器を張り付けて、24時間過ごすというもの。普通に生活できる）

取材と原稿書きの合間は、なんやかんやと医者通いの日々。

どちらも、特に問題はなく、

そうなると・・・・・・・。

6月、そうやって自分の体にこれでもかー、と向き合っていたら、

ヤツが本格的に姿を現したというわけだ。

ホットフラッシュ。

最初は遠慮気味だった。

夜中、心臓がばくばくして目が覚める。

いやーな、胸騒ぎも起こる。

（ざわざわする。

昔だったら、何か事件が起こる前触れか？　誰か死ぬ？　

などと恐れたかもしれないけれど、

誰も死なないし、日々起こるので慣れた。）

それが起こった後、じわじわーっと発汗してくるのだ。

控えめに、ほんのり熱いものが湧きあがってくる。

「あつーい」と布団をはぎ、

そのうち寒くなってきて布団をかけ、眠る。

また明け方早くに、目が覚める。

心臓バクバク。胸騒ぎ。そして、ホットフラッシュ。

これが、見事に1セットになっていた。

ちょっと面白いな、と正直思った。

私の身体、すごいことをやってるなあ、と。

お、きたぞ、きたぞ、ホットフラッシュ、

でも、力が弱くて、発汗まではいかずに終了する回もある。

惜しい。

そうしたら昨日は、ホットフラッシュデイとなった。

昼間も、やつが姿を現した。

インタビューのテープ起こしをやりながら、

じわじわーっと始まる。

これを言葉にすると？　

なんて思いながら、その「じわじわ」がどんなものなのか

正体を突き止めようとするけれど、

やつは、すーっと消えていく。

うっすら発汗。

また、次がくる。

発汗もせず、熱がこもってだるい。

そして次。

え？　またきた？

昨日は、やつの昼間デビュー日だったせいか、

すごいことになって、頭痛も始まって、テープ起こしは進まず、

そのままノックダウンなのだった。

あーあ。

6月が終わってしまうよ。