嬉しい再会

四国の旅から大事に大事に持ち帰ったものは、もうひとつ。
上甲さんが手作りした、藁細工のカメとツル。

ずっと、会いたかった。
「ジパング倶楽部」の連載「美しき日本の手仕事」で
愛媛県の工房におじゃましたのが、2016年の秋。
あの後も、上甲さんは私たちのことを気にかけてくださって、
年末になると、しめ飾りが届く。
その気持ちが、とにかく嬉しいのだった。
いつも、みかんの入った段ボール箱を開くと、
まぶしいオレンジ色の上に、横たわるようにしめ飾りがのっていて、
箱の大きさに合わせて作ったんだなあ、ということがわかるのだ。

取材の日、近所の人がわざわざこしらえてくれた「手作りおはぎ」をご馳走になった。
これが本当においしかった。
あの時、ああ上甲さんは甘いものが好きなんだな、ということはわかったので、
私からは、お菓子を送ることにしていた。
でも去年、ちょっと変化をつけたくて、日本酒を送ってみた。

上甲さんから「ありがとー」の電話をいただいた時、
「ところで上甲さん、お酒って飲むんでしたっけ?」とストレートに尋ねてみると、
「あっはっはっは、飲まんのよー」
これまたストレートに答えてくれて、あちゃーとなったけれど、
ふたりで笑った。
お酒が好きな知人にあげたら喜んでもらったというから、
良かった良かった、である。
(上甲さん、酒飲まない、とメモである)

気さくで、飾らず、朗らかな上甲さんは、
電話で声を聞くと、その声が耳に残っている間じゅう、
あったかいような、幸せな気持ちになれるのだった。
そういう人。

最近は雑誌でもどんどん取り上げられて、
売れっ子(子じゃないけれど!)でかなり多忙なのだけれど、
声はいつものんびりしている。

今回、取材で上甲さんの家の近くへ行くにあたって、
一目でも会いたい、と思っていた。
取材を終えて、空港へ向かうまでに時間がとれたので、工房を訪れた。
「ついに、会えるんよのおー」
と、電話で言われて、
「ついに、再会できます!」
と、気持ちは盛り上がる。
道を走っていると、
「今、どの辺りかいのお?」
と上甲さんから電話が入り、「今、○○を通過です」
と、カーナビを見ながら返答。
家に着いたと思ったら、通り過ごしてしまい、
「あれ?どこにおるんじゃー」
「え? この家じゃなかったー」
お互いに携帯電話を握りしめながら、
やっと姿を見つけた時には手を振り合い、きゃっきゃと喜びあった。

はい、こちらが上甲さんです。
写真を出してもいいよー、と言っていただきました。
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この笑顔!
孫のチカさんに撮っていただいた。
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こちらは、大事に持ち帰った上甲さんのカメとツル。
上甲さんは、翌日高知県でワークショップがあるというので、
この後、チカさんと一緒に高知へ。
すごいなあ。ワークショップだもの。
上甲さんのエネルギーは、すごい。

孫のチカさんにもお会いできたのが、嬉しかった。
上甲さんの手仕事を、身近に見てきて、
そのすごさに気づいたというチカさんは、
今、上甲さんをサポートしている。
これからが、楽しみだ。
チカさんの握ってくれたおにぎりが、
なんともいえず、美味しかった。
ごちそうさまでした。

このゴールデンウィーク、田植えだという。
ビニールハウスの中の、青々とした苗を見せてもらった。
藁細工は、ここからスタートなのだなあ、と思うと、
その手間と労力に、頭が下がる思いだ。

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河出書房から出ています。
上甲さんの記事も。

by naomiabe2020 | 2023-04-28 13:51 | | Comments(0)

フリーライター阿部直美のブログ。カメラマンの夫とともに、「お弁当」を追いかけて日本全国を旅しています。日々のちょっとしたことを綴るブログです。


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