ある旅雑誌で、新しい連載がスタートする。
声をかけてもらった時は、嬉しかったけれど、
できるか、自分? という気持ちがむくむくとわいてくるのも事実。
いつもそうだ。
初回は、ハードルが高い。
どんなページにするのか、手探りだ。
だいたいのイメージは編集者さんと共有したので、
あとはもう、サトル君とふたり現場へ行くのみ・・・・。
(そう、この連載も、阿部夫婦でのオファーです)
行けば、なんとかなるさ。
なんとか、するさ、と最後は開き直るわけだけど、
今回も、何とかなった。
というより、本当に素晴らしい現場だった。
1回目は良かったけれど、次も大丈夫か?
これも、いつも思う。
どの連載でも同じで、続けるほど自分の中の欲が出てきて、
慣れ、とはほど遠い。
取材は、相手に時間をどれだけさいてもらえるか、がやっぱり重要で、
何が不安かというと、それに尽きる。
客商売の現場となると、なおさらだ。
商売の邪魔をせず、でも取材活動はしたい。
長引くと迷惑だろうけど、1分でも長くねばりたい。
今回は、その点も絶妙にうまくいった。
すべては、取材をうけてくれた方の好意の上に成り立っていて、
本当に感謝しかないのだ。
取材というものを始めたばかりの私は、
乳幼児連れ、であった。
よちよち歩きの娘を引き連れての、家族巡業の弁当取材旅。(何度も言っているけれど)
取材先に申し訳ないし、実際に娘のことがあるから、効率よく取材は進まない。
サトル君が撮影中は娘を私がみて、
私のインタビュー中は、サトル君が娘を連れて見えないところに行っててね、みたいな流れでやっていた。
発表の媒体も決まっていない。
ないない尽くしだ。
でも、あれを経験したことで、
その後、子供連れじゃない取材が、ものすごい贅沢! と思えたのだった。
子どもの事を気にせずに、インタビューに没頭できるなんて、なんて幸せ、と思った。
「この雑誌に掲載します」と見本誌を相手に見せられることも、ああよかったわー、である。
たぶん、世の中のライターは普通にやっていることが、
私にはいちいち、贅沢だわー、と喜んでいた。
あれを思い出すのだ。
自分がちょっと不安になったりすると、あの日を思い出してみる。
大丈夫。なんとかなるさ、と自分に言う。
自分を励ませるのは、結局、過去の自分しかないのだなあと思う。
この前何とか頑張れたんだから、今回だって大丈夫。
ぎっくり腰になっても、やれたんだから大丈夫。
ってな感じだ。
その、新しく始まる連載の方に、
おみやげをいただいた。
ご主人が漬けたという、たくあん漬けと白菜漬け。
このたくあん、ガツンとくる。ご飯をもりもり食べられる懐かしい味。
白菜漬けは、発酵して酸味が出ていて、
それが大好物の私にとっては、最高の味だった。
あとは原稿に向かうのだ。

こちらは、2月も中頃になってから、
「ああ、白菜つけなきゃ」と動きだした人。
もう春の訪れ、ですけど・・・・という言葉を飲み込む。
いいのだ。マイペースの人なのだ。
寒波がきて、世の中は「困った」というけれど、
密かに喜ぶ。寒くなれば、この白菜漬けがおいしくなるはず・・・・・。
毎日「おいしくなーれ」と樽を撫でているそうだ。