まるで楽園

藪の中の砂利道を、車でそろそろと入っていく。
横を見れば、どうやら崖。
川も流れる。
しかも雑草のせいで、どこから先が崖なのかいまいち不明。

先導されて通っているからいいけれど、
もしそうじゃなかったら、途中で確実に不安で引き返したくなる道だ。
引き返すにも、バックはしたくない。
車一台が、枝をかき分けながら通るような道には、
急なアップダウンまで用意されていた。
ひいー、雨なんか降ってぬかるんだらアウトだよね、と言い合って通過。

その先に見えたのは、ばーんと開けた風景だった。
目指していたワサビ田に到着。

思わず「うわー」っと声が出てしまう。
石垣を何段も積み上げた段々の土地に、
ちょろちょろと水が流れて落ちていく。
そこだけ、涼しい風が吹いていた。
水が流れる浅瀬にテーブルと椅子を置いての、昼ごはん。
水辺に冷やしておいたトマトや桃、すいかにかぶりつき、
「すいかの皮は、そこらへんに投げておけばいいよ」と言われる。
草むらの中に投げたら、蟻がたくさんひっついていた。

まるで楽園だな、と思う。
一族が力を合わせてわさび田を守ってきて、
そこで、みんなでわいわいとご飯を食べる。

誰かが通り過ぎることも、
ふらっと迷い込むこともなさそうな、本当に家族たちの楽園みたいな場所だ。

でも、人の手が入ってこその楽園であって、
もしそれを放棄してしまったら、あっという間に草に覆われて見る影もなくなってしまう。
美しいな、と見惚れる石垣も、人の手によるもの。

日本各地、え? こんなところに?! と言う場所に、
思いも寄らない楽園はあるのだ。

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                        ワサビ田の水辺に、冷やしトマトと桃。
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去年訪れた、この漆の木の森も、まさに楽園みたいな場所だった。
80歳を過ぎた玉江さんが植え、樹液をとり、伐り倒す、
自分の力で作った場所。
ここでひとりで、お弁当を頬張る。

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こちらは、四万十の芝さんのあまごの養殖場。
この場所もまた、芝さんが自分の手で切り拓いた自然そのままの楽園。
「翼の王国」8月号のおべんとうの時間で、読んでください。

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by naomiabe2020 | 2022-08-12 13:29 | ライターの仕事 | Comments(0)

フリーライター阿部直美のブログ。カメラマンの夫とともに、「お弁当」を追いかけて日本全国を旅しています。日々のちょっとしたことを綴るブログです。


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