油揚げに敬意を

皆さん、油揚げはどうやって作られているか知ってますか?

私は知らなかった。
知らなかったから、あまり敬意を払うことなく、
ただのわき役みたいな扱いをしてしまっていた。
味噌汁に入れる時、ちょっと付け足しであると便利、みたいな。
スーパーで3枚入りの手ごろ価格のものを買い、
冷凍しておいてちょっとずつ使う、ということも多かった。

今は、違う。
(違う自分でありたい)
スーパーではなく、あえて近所の個人商店で豆腐と油揚げを買う。
(そう、心がけている!)

「暮しの手帖 17」で榎本豆腐店さんの取材をした。
連載している「わたしの仕事」
今回は、豆腐屋さんである。
(写真 キッチンミノル)
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この連載は、まる1日、本人に密着させてもらって、
仕事を全部見せていただく。
つまりは、取材される側としては相当煩わしく鬱陶しい状態のはずなのに、
嫌な顔せず、受け入れていただけることにいつも感謝している。

豆腐屋さんの朝は、早い。
取材の始まりは4時。そこから、豆腐作りが始まった。
豆腐と言えば私は断然「絹派」なのだが、木綿豆腐作りを見せてもらうと
豆腐の王道は木綿だろうなあ、と思う。
(この場では、豆腐についてはここまで)

豆腐作りがひと段落してから、「さあ、油揚げをやりますよ」と榎本さんがおっしゃった時点で、
私たち取材班は、もう半日分働いた気分だった。(まだ朝の8時くらい)
大豆を釜で煮るところから始め、木綿豆腐作りの要領で型に入れて豆腐そっくりのものを作る。
そうしたら、出来上がりのそっくりさんを、一枚ずつ庖丁で薄切りにする。
カタチが崩れないように、丁寧に切っていったら、それを台の上に並べて重しをする。
すべて手作業なので、昼までかかった。(もう、一日の仕事終わり、という気持ちだ)

午後2時から午後の部スタート。
油揚げを揚げる。
午前中に包丁で切って重しをしておいて水分の抜けたものを、
今度は油で揚げる。
なんと、夜7時まで揚げ続けた。
5時間、ぶっ通しで榎本さんは油揚げを揚げた。
全部で600枚。(翌日の学校給食と店で販売する分を考えての数)

正直、気が遠くなるようだった。
1枚ずつ、箸でひっくり返す。
何度も何度も油の中でひっくり返し、さらに温度の高い油で2度揚げする。
ぷかぷか、油の中で油揚げが泳いでいる。
なんと、丁寧な仕事。
心を込めてつくる、というのはこういうことかと思った。

最後を揚げ終わった時の、嬉しさといったら!
ものすごい充実感だった。
(私は、何もしていないのに・・・・)
私たち取材班にしてみれば、600枚の油揚げを終えて、
ああ、やり終えた!みたいなマラソンを走り切ったような気持ちだったけれど、
これは、30年以上豆腐を作ってきた榎本さんの、
「いつものごくありふれた1日」でしかない、という事実。

1枚90円の油揚げが高いといえる?
いやいや、安すぎるんじゃないか、と思う。
そして、食卓の主役にしたい。
この写真は、取材の日の豆腐と油揚げ。


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皆さん、近所に個人商店の豆腐屋さんがあったら、
ぜひそちらで豆腐と油揚げを買いましょう。


















by naomiabe2020 | 2022-04-29 16:22 | ライターの仕事 | Comments(0)

フリーライター阿部直美のブログ。カメラマンの夫とともに、「お弁当」を追いかけて日本全国を旅しています。日々のちょっとしたことを綴るブログです。


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