我が師匠

久しぶりに飛行機に乗った。
同乗の方々の服装の、なんとも個性的なこと。
目が釘付けになったのは、薔薇とドクロの絵柄が、これでもか、と散りばめられたシャツ&スラックスを身に着けたおじさまと、
同じ柄のミニワンピースを着たご婦人のカップル。
羽田ではかなり目を引いたけれど、ヤシの木の下にいけば、馴染んでしまうのかしら。
到着したのは、宮崎空港。
つまり、彼らはバカンスですね。
彼らの他にも、ゴルフバッグを抱えた人が大勢いた。
みんな、ウキウキしているのがわかる。

私たちは仕事だけれど、
やっぱりウキウキしていた。
会いたいなあ、と思っていた人に去年から取材のお願いをしていて、
ようやく実現したのだもの。

さて、宮崎といえば、写真家の芥川仁さんだ。
私の師匠。
今回、撮影場所に困っていたら、芥川さんが自分の事務所を使っていいよ、と言ってくださった。
お言葉に甘えた。嬉しかった。
何より、芥川さんと一緒に過ごせることが嬉しくて。

芥川さんとは、
山田養蜂場がスポンサーの「リトルヘブン」という新聞でご一緒した。
芥川さんが、編集長であり写真を撮影。
記事を書くのは私。
どこの馬の骨ともわからない、ライターになったばかりの私に声をかけてくれたのが芥川さんだった。
1年に4号発行の季刊新聞だ。
いつも、1週間近くふたりで旅をした。
日本全国の、たいていは山に囲まれた小さな小さな集落だ。
ここだ、と決めた集落に、私たちは毎日通って出会う人たちに話を聞いていった。
芥川さんの背中を、いつも追っていた。
取材とはどういうものか、その姿勢、向き合い方を背中から教わった。
文章うんぬんよりも、もっともっと大事なことだ。
(文章についても、厳しいダメ出しをされたけれど・・・・)
私はいまだに、何かを書いて発表する時に、
芥川さんならなんて言うかな、と思う。

リトルヘブンが新聞からウェブに切り替わるタイミングで、私は「卒業」となった。
その後、「里の時間」(岩波新書)として、
書籍にまとめることができて、それは本当に幸運だった。
あの5年間があったから、今の私があると思っている。

お会いするのは、
2年前、銀座のキャノンサロンで芥川さんが写真展を開いた時以来だった。

それにしても、芥川さんのエネルギッシュなことといったら!
昔から、芥川さんの話を聞くのが大好きだ。
芥川さんは、アポなしでどこへでも行く。(しかも、鼻が利く!)
最近は共同通信の配信で、漁村、農村を訪問した記事を地方新聞で連載していて、
その取材の話の、面白いことといったら。

今回の取材でお会いしたIさんのインタビューも、
心に響く言葉にあふれていた。

宮崎の旅は、胸いっぱい、いろいろなものがあふれそうになって帰ってきた。
「芥川さん、さすがだよ。すごい刺激をうけた」
帰って以来、サトル君がなにやらごそごそと動き始めた。













by naomiabe2020 | 2022-03-22 14:40 | ライターの仕事 | Comments(0)

フリーライター阿部直美のブログ。カメラマンの夫とともに、「お弁当」を追いかけて日本全国を旅しています。日々のちょっとしたことを綴るブログです。


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