旅は好きなのに、一歩家を出るまで最高に気が重い。
我ながら、変な性格だと思う。
今回も、数日前から「あたし、ちゃんとやれるだろうか」とドキドキしていて、
前の晩などは、気が張って何度も夜中に目が覚めた。
気がちっちゃいのだ。
最近の旅取材は、夫との二人旅だったので、そういう張りつめ方はなかった。
実に久しぶり。
娘が小さかった頃、写真家の芥川さんと旅取材に出る時には1週間家を留守にしていたから、
「お母さん、行かないでよー」と娘は数日前からめそめそし始め、
直前に熱を出したりして、ひえー、うつるーという恐怖もあったなあ。
私自身も、旅の前にどんどん気持ちが沈んでいき、ああ、大丈夫かな、ちゃんと取材できるかな、
うじうじして、朝旅立つ時なんて悲壮感すら漂っていたはずだ。
でも、一歩家を出て旅が始まると、これがもう、楽しくてたまらない、
家のことは、すっかり頭から離れてしまうのだった。(ごめんよ、娘と夫)
今回は、旅のメンバー(編集者、ライター、カメラマン)がみなさん、はじめまして、の大阪在住者。
チームで動くのも、久しぶり。
更年期で、体が時々予期せぬ反応を起こすので、
それもまた、不安である。
あたし、がんばれ、やれるよ、と自分を奮い立たせ、
前の日にテレビ電話で娘に「お母さん、大丈夫だよ」と励まされ(娘は成長したもんだ)
行きの新幹線では、本や雑誌を読むでもなく、新大阪まで静かに車窓を眺めていた。
(緊張している証拠だ!)
(斜め前の乗客の男性が、タブレットでお笑い番組を観ながら、携帯でインスタチェックをガンガンやっているのを
横目に見て、朝からあのテンションはどういうことなんだ、と異星人を見る気分になる)
しかし、新大阪駅で編集のFさん、カメラマンのTさんと合流して、
車で丹波篠山へ向かう道すがら、すっかりほっとする。
そう、始まってしまえばいいのだ。
「レストイン デカンショ」で、
ライターのMさん、旅のプロデューサー的存在Yさんも加わって、
サンドイッチを食べる頃には、すっかり旅モードがスタート。
前の旅もそうだったけれど、
旅の始まりは、「デカンショ」だ。

兵庫県の丹波・篠山へは、6年前にも来た。
「知らない町の、家族に還る」という冊子を作る時に、
著者のひとりとして、旅をさせてもらったことがある。
今回、その旅のつづき、でもあり、
6年後の丹波・篠山を旅して見えてくるものを文章にする、という企画。
声をかけていただいたことが、嬉しい。
旅のメンバーは、前回とはがらっと変わったけれど、
今回もまた、楽しい旅だった。
そうなのだ。
取材が始まってしまうと、もうぐぐぐっと引き込まれて、
我を忘れてしまう。
取材先は、4軒。
2泊3日の旅だった。
旅の詳細は、雑誌のエッセイで!
旅のおわり、私のバッグははちきれんばかりになっていた。
取材先で買ったもの、いただいたもの、がたんまり。
お茶各種、あずき、ようかん、ちまき、黒豆の枝豆、
チーズ各種、かぼちゃ、そして、むべ(!)まで。
新幹線の乗客(旅人)の9割がガラガラ引くタイプの小型スーツケースのところ(改めてびっくり!の普及率)
私は、学生が昔合宿とかに持って行ったような、でかいバッグを肩に背負っていた。
もう、肩に食い込む食い込む。
両手に食べ物、いっぱい。
最高に幸せだった。
出会った人たちの顔を思い出しながら、帰りの新幹線で食べる鯖寿司。
そして、旅のおともは「週刊文春」。
仕事終わりに、ヒートアップした頭をクールダウンするには、文春は最高の友達。
取材チームのみんなとの時間も、楽しかった。
1台の車に4人乗って、峠を越え、朝霧の道を走りぬけ、
いつも、トイレの心配をしあう。
取材が終わると、よかったね、と言い合える人がいることも嬉しい。
ああ、ずっと旅を続けていたいなあ、と思うのが旅のおわりだ。
旅で出会ったみなさん、ありがとうございました!
もうすでに、丹波・丹波篠山が恋しい。