誰かのために

知らなかった世界に、足をちょっと突っ込んで、
見えた景色に心が震えた。そんな1週間だった。

2件の取材をした。
1件につき2日かけたので、
計4日間、猛暑で汗だくになっての取材だった。

1つは、子ども食堂の取材。
もう1つは、コミュニティーガーデンの取材。

「子ども食堂」については、テレビや新聞で活動のことを見聞きしたことはあっても、
実際にその場に行ったことはなかったし、当事者から話を聞いたこともなかった。
今回、個人宅を「子ども食堂」に開放している方に取材をお願いして、
実際に活動の日に、おじゃました。
コロナ禍で、食堂としてはオープンできない。
それならば、と食品の支給を始めた。
いろいろな所から寄付してもらった米や野菜などを、
主に子ども食堂を利用する小さい子どものいる家庭に配る。
経済的に困っているかどうかは、傍目にはわからないし、
それを申告する必要もなく、誰でも受け取れる。
ただ、「右から左へモノを移動するだけじゃあおもしろくないからね」
とボランティアの皆で意見が一致して、
「おやつ」を手作りして、それも一緒に配ることにしているという。
その日のおやつ、寒天ゼリーを作る人たち、
その横で卵焼きを作り始める人、お菓子を袋詰めする人。
みなさん、ボランティアだ。
冷やし中華のまかない作りも進み、
みんなで一緒に、冷やし中華の昼ごはんを食べる。
夕方、学生のボランティアも企業で寄付に参加してくれる人もやってきた。
印象的だったのは、配るほうも受け取るほうも、笑顔だったことだ。
取材している私も、なんだかその場にいるのが楽しくて笑顔になっていた。

そういう、1日だった。

あれは、なんだったんだろう、と後になって考えた。
子ども食堂、をやっている皆さんは、無償ボランティアだ。
誰かのために、自分の時間と労力を惜しみなく提供する。
これは、本当に頭の下がることなのだけれど、
私は頭を下げながら、その目で「いきいきとした大人たち」を見て感動していた。
行動する人自身が、楽しんでいる。
この「楽しい」は、どんどん周りに伝播して、そこに集まる人を巻き込んでいく。


もうひとつの取材、
ゴミ拾いと、花壇のみずやり、も同じ気持ちになった。
これも、「自分の住む街をきれいにしたい」というまっすぐな気持ちそのままに、
有志が集まってやっている。
2日間、同行。
暑かった。
とにかく汗びっしょりになったのだけれど、
これもまた楽しかった。
いや、私は実際にゴミ拾いも花壇の水やりもしていないし、くっついて歩いて話を聞いたのだけれど。
ちっちゃい子どもも、トングを使ってごみをひろう。
幼児から80代の方まで、本当に幅広い年齢層の人たちが集まっている。
実際に道路と公園がすっきりキレイになったのを見た充実感。
弁当の空き容器が、どうしてそのまんま公園にぽい捨てされているんだよ、
と思ったし、たばこのぽい捨てがあまりに多くて閉口した。

自分の暮らす街を皆できれいにしたいね、という人たちが集まって
一緒に行動を起こす、というのはすごいことだ。
しかも、高校生の男の子まで
「掲示板にあった案内を見て参加してみました」と、
友達と一緒というわけでもなくひとりで初参加していた。

2つの取材は、異なる媒体のもの。
たまたま、1週間でふたつを経験することになった。

私、誰かのために、何かしたことあった? と考えて、
恥ずかしくなってしまった。
自分のことに精一杯すぎた。自分のことしか考えてこなかった。

お金、についても考える。
今の世の中、どんな場合でもお金が介在している。
何かに参加する時には、お金を払うものだし、
労力を提供すれば、お金をもらえる。

今週見たふたつは、
お金のやりとりが発生していない。
自発的に人が集まり、行動を共にして、
お喋りして笑い合っていた。


誰かのために_c0402074_16043367.jpg
編み猫ちゃん家族。

この春、1人暮しを始めるうちの娘がさびしくないように、と別の猫ちゃんを
プレゼントしていただき、そのお礼に拙著をお送りした、という経緯あり。
そしたら、またいただいてしまった!
猫ちゃんを作るのが趣味とのことで、有難く頂戴しました。

お金、じゃないよなあ、と思う。
今週、そんなことをずっと考えている。

























by naomiabe2020 | 2021-08-07 18:18 | 日々のこと | Comments(0)

フリーライター阿部直美のブログ。カメラマンの夫とともに、「お弁当」を追いかけて日本全国を旅しています。日々のちょっとしたことを綴るブログです。


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