思い出しては、うううう、と唸る。
また少しして、あああああ、と身もだえする。
トイレに入って、うぎー、
コーヒーを飲みながら、あぎゃー。
そのたび、自分に言い聞かせる。
良かったじゃない。
大丈夫だったんだから。
無事だったんだもん。
命拾いをしたのだった。
昨日の取材は、最近のなかでは「かなりの気合を入れて」臨むべきものだった。
檜原村の山の上に、7時半集合。
朝4時起きして5時過ぎには電車にのり、暖房のきいていない窓のあいた車内で凍えながら、
空が明るくなるのを車窓で見た。
山の上は、きーんと張り詰めた空気。太陽が顔を出すと、手をかざしたくなるような優しい暖かさ。
山仕事の現場を、一日中取材させてもらった。
チェンソーで木を倒す瞬間など、身震いするくらいの迫力だった。
寒さは気にならなかった。(超厚着とホッカイロで対策)
体力ももった。(前の日、9時に布団に入ったし、晩酌のビールもやめている)
さて、充実の一日を終え、最後に和やかに雑談・・・のその時、
私は急に嫌な予感がして、ポケット、バッグの中、もうひとつのバッグの中をごそごそ始めた。
もう一度、バッグの中身をひっくり返し、ノート、タオル、石鹸、手袋、とまあいろいろを並べ、
恐ろしい現実を知った。
ない。
ないないないない。
ICレコーダーがない。
一日中、大活躍したレコーダー。
とりこぼしたくない言葉が、いっぱいいっぱい入っている。
目の前が真っ暗になる。
そして、取材を受けてくださったYさん、編集&カメラマンの取材チーム、
二手に分かれて、その日の午後に立ち寄ったところを再度確認することに。
暗くなるまでに、あとちょっと。
ここかな、の場所にはなかった。
神様、仏様、見つかったらなんでもします、
もう、あれこれ愚痴とか文句なんて言いません・・・・・・
謙虚に、前を向いてちゃんと生きていきますから、どうかお願い・・・・
神頼みをしていたら、
Yさんから電話。「ありましたよー!」
場落ちていたのを発見してくれた。
というわけで、絶体絶命だったのだけれど命拾いをした。
もう、みんなに抱きつきたい気持ちだったけれど、ソーシャルディスタンスだ。
感謝でいっぱい。
本当に本当に、泣けてくる。
それを、思い出しては、あああああと叫びたくなる。
何度も思い出しては、あああああ、である。
間抜けすぎる。
本当に、ダメだなあ。
取材に集中していると、私は本当に周りが見えなくなってしまう。
そういう性格がわかっているから、気をつけているつもりなのだけど、
やっぱり、やってしまうんだなあ。
帰りの電車の中で、思い出した。
前々回の取材(同じく檜原村で)の時、インタビューを終えて「ありがとうございました」と頭を下げて、
車に乗った。
いい取材だった、本当にいい時間だった、と言いながらシートベルトをしようとして、
何だか私、身軽だわ、と思い、はっとした。
バッグをそのまんま、事務所に置いてきてしまった。
気づいて、良かった。
つまり、2度目である。
今年も取材はあとひとつ。
無事ここまでやってこられたことに、感謝!