愛媛県に住む上甲さんに、自著の本と、ほんの気持ちの甘いお菓子を送った。
ずっと送りたいと思いつつ、タイミングを逃してしまっていて、
ようやく先日、手紙と一緒に送ることができたのだった。
上甲さんは、知る人ぞ知るしめ縄をなう名人だ。
取材でお会いした時は、正月の号ではなかったため、
「かめ」の親子を作ってもらった。
もう、何年も前のことになるのだが、
それ以降も上甲さんはひょっこり電話をくれる。
「サラメシ、見たでー」とか、
「あんたは最近、どうしてる?」とか。
数年前の取材の日、上甲さんがわざわざ近所の人に頼んで作ってもらったという
「おはぎ」をいただいた。
本当に美味しいおはぎで、上甲さんが甘いもの好きなのはその時にわかっていたので、
和菓子をちょこっと送ったのだ。
さっそく、電話がきた。
「本とおかし、届いたでー」と。
今年は県内の大学生たちがグループで上甲さんを訪ねてきて、
田んぼの手伝いや、稲刈りを手伝ってくれたそうだ。
どうやら、稲わらで「なう」作業を一緒にやるということらしい。
「若い人が来てくれて、わしもなあ、元気いっぱいじゃー」という声が本当に元気いっぱい。
「上甲さん、いくつになりましたっけ?」と聞くと、
「それがなー、昨日が誕生日じゃったんじゃ。なんともまあ、ちょうどあんたから
いいもんが届いたんよー」というから、びっくり。
84歳の誕生日。
すごいな、どんぴしゃりのタイミングだった。
今年も張り切って、しめ縄を作らんとな。
ただ、後継者がおらんかららなあ。そうそうは、生きられんからなあ。
という、電話のやりとりが、大声で繰り広げられ、
(私の携帯電話から、上甲さんのお声がひびく、ひびく)
隣の部屋にいた娘にも当然全部聞こえている。
昼ごはんの時に、「ねえ、上甲さんの誕生日の日に届くなんて、
最高だよね。なんかさ、神様の采配ってやつ?」と私がまた振り返って言うと、
「お母さんさー、あの電話のあとずーと、頭の中であの会話をリフレインして
ひとりでニヤニヤ笑っていたでしょ。それで、今また思い出して喋ったんでしょ。
お母さん、わかりやすすぎー」
と、言われた。
どんぴしゃりであった。
また、笑いが止まらなくなってしまった。
去年の暮れに、上甲さんが送ってくださったしめなわ。
みかんと一緒に送ってくれる。
そのみかんの箱の大きさに合わせて、しめ縄をなってくれるのだ。
「あんたさー、しめ縄を玄関に飾っとった写真を前に送ってくれたけど、
あれ、逆じゃ。しめ縄は裏と表があるけんな、あんたのは裏じゃったー。あっはっは」
上甲さんの笑い声で、福がきた気分。