最近のこと

2月と3月は、仕事に追われてバタバタっと過ぎてしまった。
原稿の締め切りと確定申告に追われていた時、娘が帰省。
ギターと瓶に入った塩こうじを持って帰ってきた。
塩こうじは、こうじに塩を混ぜたばかりで、
毎日ちゃんとかき混ぜないといけない、とかで、
せっせとかき混ぜていた。
我が娘は、私が手を出したこともない自家製味噌作りもやっていた。
驚くばかり。
しかも、よっぽど暇だったようで、
お向かいさんからもらった夏ミカンで、
オレンジピールまで作ってくれた。
最近のこと_c0402074_16121715.jpg
見た目はさておき、美味しくできた。
さんきゅー、娘。

娘がまた、家を離れてさみしくなったけれど、
仕事があるってありがたい。
新しい出会いがあって、原稿、原稿、と頭を掻きむしる毎日があるっていい。

最近のこと_c0402074_16245762.jpg
こちらは、「翼の王国」3月号。
「おべんとうの時間」は、静岡県の天竜浜名湖鉄道の駅員さんです。
東京オリンピックの年(昭和39年)に国鉄に入って、蒸気機関車の車掌もしていた
鉄道マンのナツメさん。
これを読んだ後、ぜひ彼に会いに「三ヶ日駅」へ行ってみてください。

最近のこと_c0402074_16122818.jpg
こちら、今書店に並んでいる「旅の手帖」4月号。
連載中の「喫茶店のあるじ」は、cafe中寿美さんです。
長野市街から30分以内の距離にありながら、
強烈なヘアピンカーブのある峠をぐいぐい登って行った先は、まるで別世界。
私たちが取材した時の飯綱高原は、一面が雪景色で幻想的だった。
個人的には、あまり公に教えたくない、
自分だけの大切な場所にしておきたい喫茶店。
ステキな店主がいます。また会いたいなあ。
最近のこと_c0402074_16124251.jpg
あ、横向きで失礼しました。
「暮しの手帖」に連載しております「わたしの仕事」。
写真はキッチンミノルさんです。
今回は、麦茶やあられの原料などを作っている
「川原製粉所」さんに密着。
取材の時は、「ひなあられ」を作っていらっしゃって、
これがもう、見ごたえあり。
もちを職人ふたりで伸ばす時、お相撲さんみたいな動きというか、
向き合う2人が中腰で、ささっと両足跳びで後ろに下がっていく動きが圧巻。
砂釜で麦茶を炒るところも、目が離せない緊張感にあふれていました。
ぜひ、書店で。








# by naomiabe2020 | 2024-03-25 16:45 | ライターの仕事 | Comments(0)

からだの声

フラメンコの舞踏家さんが、
スタジオに入ってまず最初にやっていたのが、体の声を聴く、ということだった。
いきなり、屈伸運動みたいなウォーミングアップはしない。
椅子に腰かけ、目を閉じて
自分の手のひらを、腰や脇腹に当てる。
静かな時間だ。
鎖骨のあたり、喉、耳の後ろ側。
ひとつひとつ、時間をかけて手を当てる。
おーい、と声をかけているみたい。
どうですかー?
いけそうですかー?
若かった頃は、体に命令してきたけれど、
年を重ねた今は、命令してはフラメンコは踊れないっていうことに気づいた、
とおっしゃっていた。

その言葉が、あれからずっと私の中にある。

ああ、私はどうだろう。
身体の声を聴いている?
いやいや、拝み倒してきた気がする。
お願いします、なんとか今を切り抜けられますように、
と、年中お願いモードだ。


最近の私の体は、得体がしれない。
そう、更年期というやつで、これが全く不思議だ。
冬の間は落ち着いていたのに、
春が近づいてきて、むくむくと体の中からうごめくものがある。
夜、眠っていて、明け方のまだ暗いうちに目が覚める。
そうすると、まずヤツがくる。
胸のあたりいっぱいに、イガイガ、チクチク、キリキリと。
いや、これを言葉にできないのだ。
いつも、これってなんだろう? とヤツの再来のたびに考えるのだけど、
言葉が見つからない。くやしい。
強いて言うなら、初恋の時の胸の疼き?
ちくん、とくるあれだ。
甘酸っぱいあれは、青春そのもの。
でも更年期のそれは、何十倍の勢いで押し寄せてくるのだよ。
だから、うへーっとむせそうになる。

ヤツは、あっさりと去っていき、
つぎに来るのが、発熱だ。
自家発熱。ホットフラッシュですね。
これもまた、変な気持ちになる。
これって、言葉にするとなんだ? と毎回考えるのによくわからない。
くやしい。
じわーっとあつくなって、布団をはぐ。
私の場合、そこまでの発汗力がないらしく、
勢いは弱い。
あついあつい、と布団をはいだ後、またすぐに寒くなって布団を戻し、
ぬくぬくしながら、また眠る。

また、その後で、目が覚めたら、ヤツがくる。
発熱もセットでくる。
あちーっと布団をはいでから、さむい、とまたもどす。

ということを、繰り返す。
すごく嫌ってほどでもなく、
こういうことが自分の体で起こることが不思議でならない。

話は変わって、鹿児島の牧場へ行ってきた。
競馬や乗馬を引退した馬たちが、余生を過ごす牧場だ。

馬たちは、広い広い高原で、好きなように駆け回って過ごせる。
紐に繋がれていない馬というものを、しかも集団でいるのを初めて見た。

彼らは、人懐っこい。
ぬーっと近づいてきて、自分の顔をくっつけてくる。
最初は、ひいーっと身をすくめて、怖くもあったのだけれど、
慣れてくると、可愛くてたまらなくなってしまった。

そんな彼らが、ぼーっとしている姿が印象的だった。
おじいちゃん、おばあちゃんの馬たちだ。
目を半分閉じて、本当にぼーっとしているのだ。
人間とまるっきり同じ。
仲良しの馬とじゃれあって、一緒になってぼーっとしている。
時々、どたっとひっくり返って、無防備な姿で寝っ転がっていた。
その姿が、なんとも平和そのものだった。
老い、は人間にも馬にも、すべての生き物にやってくるわけで、
それこそ自然なんだよなあ、なんて思わせてくれた。

からだの声_c0402074_16080467.jpg









# by naomiabe2020 | 2024-03-25 16:10 | 日々のこと | Comments(0)

家庭内インタビュー

朝、いつものようにコーヒーを淹れたところで、
「今日、ちょっといい?」とサトルくん。
お、きたぞきたぞ、と思う。
そろそろかな、という気がしていた。
インタビューを受けたい、という申し出だ。

なんじゃ、そりゃ、と思うでしょう。
ヘンな夫婦だ、まったく。

「アベさんは、どうして写真を撮るようになったんですか?っていうところから、
始めようかな」
「うん、じゃあ、そっからいこうか」

実は今月、サトルくんは人前で喋ることになっている。
時間は30分くらい。(短い!)

10代後半から、彼は気象観測船の船乗りだった。
仕事を辞めて、シベリア鉄道の旅に出るのだけど、その時におじいちゃんからカメラを手渡された。
「それが、写真を撮り始めたきっかけですねえ」

これまでもインタビューを受けると、そのことを喋ってきた。
おじいちゃんのカメラ。
ここらへんの話は、流れるようにすーっと進む。
だって、何度も話している。私も何十回と聞いてきた。

でもさ、とここで私が口を挟む。

「そもそも、それまで本当にサトル君は写真を撮ってこなかったの?
家にカメラはなかったの?」
「なんで、おじいちゃんはカメラを持っていたの?おじいちゃんは、何を撮るため?」
「うつるんです、とか出てきたよね。そういうのも、使うことはなかったの?」

ひとつひとつ、掘り起こす感じだ。

「おじいちゃんは日本画家だったからさ、各地に行って風景を見る時に、写真も撮っていたんだよね」
と言われて、なるほど、と思う。
なんでおじいちゃんのカメラだったのかがわかった。

「今ってさ、携帯で何でも写真に撮るけれど、自分たちが子どもの頃って、
ほとんど写真を撮らなかったよね。どんな時にとったっけ?」

インタビューは、
扉をあけていく作業だ。

コーヒーを飲みながら、そんなふうに2時間くらい喋っていたら、
「なんだか、喋れそう」な気がしてきたらしい。

さて、どんな話になるでしょう。

場所は「パシフィコ横浜」のキャノンブース。
【カメラと写真映像の祭典 CP⁺2024】
2月22日~25日まで。
https://corporate.canon.jp/profile/communications/event/cpplus2024

阿部了は2月24日(土)14:30~15:00
「カメラとの出会いから妄想する写真へ」というテーマで喋ります。
https://corporate.canon.jp/profile/communications/event/cpplus2024?_ga=2.80923732.254955215.1708161337-258810122.1707098550


実は、娘の受験前にもこんな時間があった。
高校受験の前、大学受験の前。
私が夜、ベッドの中で本を読んでいると、
「ちょっといい?」と言って、娘が布団に潜り込んでくる。
「今から、よろしく」と言われて、ふたりで並んで体を起こす。
腰から下は、ふかふかの布団の中。
それをやる時は、つまり受験のシーズンは冬だったってことだ。

娘が、「将来の夢」とか「高校に入ったらやりたいこと」とか、
「学校生活で力を入れたこと」なんかを喋り出す。
つまり、面接の練習だ。
部活動が、とか、あの実習の経験が、とか、
ありきたりの話を聞いていても、あんまりおもしろくない。
だから、なんで? なんで? を繰り返しながら、
もっと具体的な、私が聞きたいような方向にもっていく。
でさ、なんでそう思ったの? 
その時、どうだったの?
もっと聞かせて。
自分の言葉を探してみて。

娘は、毎晩いっぱい考えて、
自分の体の中から出てくるものを、必死で捕まえようとしていた。

母と娘のインタビューの時間だった。
セッションみたいな感じか。

あの時間が愛おしい。



































# by naomiabe2020 | 2024-02-17 18:48 | 家族のこと | Comments(0)

最近の仕事

最近の仕事のお知らせ。

■東芝エレベーターの冊子「FUTURE DESIGN」のなかで、
「わっしょいニッポン」という連載をしています。(年4回の季刊発行)
ネットでも見られるので、こちらから。
(デザイナーの有川智子さんを訪ねて、長崎県の五島列島の福江島へ行きました)
https://www.toshiba-elevator.co.jp/elv/pr/futuredesign/pdf/fd74.pdf

■「暮しの手帖」で連載の「わたしの仕事」
第28回は、環境保全NPO職員 片岡さんに密着です。
取材の日は、練馬区の石神井公園での活動日。
ボランティアの人たちと一緒に、フローターというゴム製ボートで池の中へ。
観測用の定置網をはるところを見せてもらいました。
私と編集のIさんは普通のゴムボートに乗っていたのですが、
カメラマンのキッチンミノルさんは、片岡さんたちと同じ、一人乗りのフローターで接近しつつの撮影。
足ヒレをつけてバタバタさせると後ろへ進むしくみなのですが、
カメラを構えつつ、前へ近づきたいのに、後ろへ後ろへと移動してしまう。
キッチンさん、かなりの奮闘でした!
片岡さんの、今の活動に至るまでのご自身の話、
とっても面白かったので、ぜひ本文を読んでくださいませ。

最近の仕事_c0402074_17161210.jpg
■「旅の手帖」(交通新聞社)にて連載中の
「喫茶店のあるじ」。
こちらも3月号で11回目になりました。
千葉県木更津にある「喫茶りんどん」さんへ。
夫婦二人三脚でやってきた井上さんご夫婦。
人生は楽しまなくちゃ、というエネルギッシュなオーラ溢れるおふたりに会いに行って欲しい。

最近の仕事_c0402074_17162196.jpg
■全日空機内誌「翼の王国」
2月号の「おべんとうの時間」は、新潟県のJA津南の職員・福原さん。
ちょうど1年前の2月に取材に行き、寝かせておいた記事です。
津南町の「ゆり」担当の福原さんですが、
この取材は、ゆりの栽培・出荷時季ではない冬の2月。
なぜそんな時に? と思うでしょう。
実は、貯蔵庫いっぱいに雪を貯めておく「雪室」を作る日でした。
津南のゆりにとって、この雪室がとても重要な役割を果たしていて、
球根を保管しておいたり、
夏場、市場に出荷する前にゆりをこの雪室に一時置いておくのです。

その雪室づくりの日を、狙っておりました。
無事にその日に行けて、良かった!
最近の仕事_c0402074_18040073.jpg
最近の仕事_c0402074_18035435.jpg
最近の仕事_c0402074_17404937.jpg
翼の王国は、機内の座席ポケットにはまだ置かれていないようです。
CAさんに「翼の王国ください」と、周りの人にも聞こえるように言ってくださいませ。
あれ? あるの? と多くの方に気づいていただきたい。

ウェブ上でも記事を見ることができます。
https://www.ana.co.jp/guide/inflight/service/digital-media/pdf/tsubasa_202402.pdf
(翼の王国 eライブラリ で検索を)






# by naomiabe2020 | 2024-02-17 18:10 | ライターの仕事 | Comments(0)

折々のことば

折々のことば_c0402074_10421611.jpg
新聞はいつも、テレビ欄をひっくり返して社会面から読む。
でも今日は、1面から。
自分の名前が新聞の1面に載るなんて、
なにか物騒なことに巻き込まれる事態しかないだろうと思っていたけれど、
こんなこともあるのだなあ。
鷲田センセイが、言葉をひろってくださった。
「指も旨い」
・・・・そこですか?
そうきましたか? 
サトルさんのエッセイの部分です。
鷲田センセイの、そのセンスが好きだ。

ちなみに、昨日の「折々のことば」は、
ウィリアム・ジェイクスピアでした!
「I would cure you]
わたしが必ず治します、と訳すところを、
シェイクスピア劇を東北弁で上演してきた英文学者の下館さんは
「治っから」と訳したという。

「治っから」である。
なんかしみじみいいなあ、と思うのだけど、
どこかどういいのか、言葉にしろと言われると困る。

その前の日は、
「なぐなったじいちゃんのごど思い出すて・・・・
おらもじいちゃんのジリエットだったんだべが~」
(宮城県女川町の女性)
東北弁で上映されたシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」
を観た人の言葉らしい。

じいちゃんのジリエット、にしびれてしまった。

改めて、我が「おべんとうの時間(4)」をさっき読み返した。
鷲田センセイが読んでくださったなんて、本当に嬉しい。

ということで、私の「折々のことば」編。

「僕、味派じゃないんだよな。環境派だよ」
(東京都のデザイナー金田さん)
グルメな人は口の中だけ独立してるんだよ、とデザイナーは言う。
子ども時代、駄菓子屋で買う菓子パンが高級品で、
おにぎりなんていつも家で出てくるもの、と思っていたのに、
遠足で食べるとすっごく美味しい。何でだろう、と考えたという。
「小鳩くるみの歌声は意外と弁当合う」と気づき、
弁当を広げながら彼女の音楽を聴くのも、環境派ゆえらしい。

金田さんの言葉、大好きなのだ。
なぜなら、私も環境派。









# by naomiabe2020 | 2024-02-03 11:31 | 日々のこと | Comments(0)

フリーライター阿部直美のブログ。カメラマンの夫とともに、「お弁当」を追いかけて日本全国を旅しています。日々のちょっとしたことを綴るブログです。


by 阿部直美