観音山のふもと

カッパピア、が大好きだった。
高崎の観音山にあった遊園地だ。
プールもあった。
流れるプールなんて、当時は画期的だった。
冬はプールがスケート場になった。

ある時点でカッパピアが閉園になったことは知っていたけれど、
本屋でたまたま見つけた写真集で、久々にカッパピアと再会した時の、せつなさ。
「廃墟」スポットになっていた。
朽ち果てた姿が、なんともいえなかった。

だから、群馬に帰省した時に山の上にひょっこり姿を現している「観音様」が目に入るたび、
カッパピアはもうないんだよなあ、と胸がちょっと疼いたりしていた。

ああ、私は時代遅れだった。
本当に、時代に取り残されていたよなあ。

観音山のふもと_c0402074_11042819.jpg
観音山のふもと_c0402074_11044062.jpg
カッパピアのあった場所は、広々とした公園になっていて、
そのひとつが、「ケルナー広場」になっていた。
ドイツ人のケルナーさんによる、独創的な遊具がいっぱい。
子ども達が、きゃっきゃ言いながら、それはもう真剣に遊び回っていた。

実はこのケルナー広場が誕生したのは、
市民の熱烈な働きかけ、があってこそ。
ケルナーさんに直談判し、高崎市の行政を動かした人たちがいる。
本当にすごいのだ。

その方々に会いに行き話を聞いてきたのが、先週末のこと。
今もその余韻に浸っている。
だって、あまりにドラマティックな展開の話なのだ。

観音山のふもと_c0402074_11050045.jpg
こちらは、高﨑の観音様。
その昔、観音様は女性だから、カップルで行くと別れる、とか言われた。
女は嫉妬深いから、なんてことを聞いた気もする。
なんじゃそりゃ? という話だ。
観音山のふもと_c0402074_11050639.jpg
これってぐりとぐらのホットケーキじゃん! と大興奮。
私の顔くらいの大きさのマドレーヌ。
こんな遊び心、しびれるなあ。ごちそうさま。





# by naomiabe2020 | 2025-04-22 11:28 | ライターの仕事 | Comments(0)

未練たらたら・・・

タイトルの「未練たらたら・・・」とは、一体何に?
3月に未練たっぷり、です。
カレンダーをめくるのが、嫌でたまらなかった。
3月にしがみついていたかった。
3月を、もっともっと愛でていたかった・・・・なあ。

わけわからん、と思われるでしょう。
自分でも、ちょっと困っている。

3月、
大切な人と再会できた。
娘が大学を卒業した。

ここでは、娘のことを少し。

4年前の春、何もないがらーんとしたアパートの部屋で、
ベッドを組み立て、棚を組み立て、机も組み立てた。
冷蔵庫が届き、洗濯機も届く。
ついに始まる。娘の1人暮し。
風呂の洗剤、台所用の洗剤、シャンプーにリンス、お米に油に醤油に・・・・
洗剤もシャンㇷ゚―もリンスも、ボトルだけじゃなくて詰め替え用まで買ったのだった。
なんで、そこまで? と思うけれど、
あの時は、必死だった。
とにかく、必要なものを揃えてあげなくちゃいけない。

夜、家族3人で居酒屋で夕飯を食べていると、
その店は昭和歌謡がBGMだったのだけど、
私はもう、胸がいっぱいで食べ物が喉を通らないありさまだった。
「モーニン、モーニン、君の朝だよ」
の時に、うわっと泣き出したのだった。
なんだか知らないけれど、モーニン、に触発された。

その後、我が家では笑い話として、
「モーニン」は登場する。
今、改めてどんな歌だっけ、と思ってネット検索して、
岸田智史「きみの朝」だと知った。
歌詞については・・・・ん?

あれから4年、
みっちり詰まっていた娘の部屋から、また物がなくなった。
がらーんとした部屋で、衣装ケースをテーブルにして
キャロットケーキと紅茶の朝ご飯をいただいた。
そのキャロットケーキの、美味しかったこと。
娘は、「このケーキを作る○○さんと○○さんの姿が目に浮かぶよ」と言った。
ケーキは、娘が春からお世話になる農場で買ってきたのだった。
農場のなかでも、彼女の仕事は牛の世話だ。
娘が搾乳した牛乳は、チーズになる。

私も、農場に挨拶に行くことができたので、
今こうしている時も、娘が一緒に過ごしている牛たちが目に浮かぶ。
農場のお仲間たちの顔も、浮かんでくる。

目に浮かぶっていいな。

2週間前の水曜日、卒業式だったっけ。
未練がましく3月のカレンダーを眺めながら、
はかま姿の娘と、友達の姿を思い出してしまう。

しぶしぶ、カレンダーをめくった。
甘い余韻に浸っていたいけれど、
原稿書かなくちゃいけないんだった。
次の取材先を探して、前へ前へと進まねばいけないんだった。
























# by naomiabe2020 | 2025-04-02 18:09 | 日々のこと | Comments(0)

早起きにもほどがある

体が、まだガタピシしている・・・・。
いいの、いいの、ワタシ頑張ったんだもの、ちゃんとやれたんだもの、
と先週金曜日のことを思い出しては、しばし余韻に浸る。
ああ、本当に良かった。無事にやれて、自分えらかった。
いくらでも、自分を褒めてやりたい。


なんと、その日の起床は午前2時30分。
3時30分に家を出て、取材のはじまりが4時30分。
築地場外市場の、某商店に一日密着だ。

前の日は、逆算しながら生活した。
原稿を書きながら時計と睨めっこして、
夕飯は6時と決め、その前に風呂に入って、8時には布団に入る、と決める。
真面目なワタシは、ちゃんと実行。
でも、緊張して途中で何度も目が覚めて、そのたびに更年期のホットフラッシュがやってきて、
あついの、さむいの、を布団の中で繰り返して、気づけば2時半。シャキッと起きる。
たらこおにぎりをしっかり腹におさめ、サトルさん、よろしくお願いします、と車に乗る。
(3時半に車を出してくれる夫には、感謝しかない・・・普段彼が早朝に撮影に行く時、
私は起きて送り出すこともしないんだけど。ごめんよ、とこんな日に思う)

4時30分の築地場外市場に到着して、うおー!と目を見張った。
路地が、明るい。
あっちの店こっち店がシャッターを開けて動き回っている。
なんだ、この活気。おはよう、の挨拶があちこちで飛び交っている。
5時になったら、近所の人がもう普通に買い物に来た。

大寒波の日だったから、
その対策だけは万全に、と思って着ぶくれだるま状態だ。
(これも前の日、どこまで重ね着をできるか、どの組み合わせが一番あったかいかをやってみた)
朝の4時半も寒かったけれど、
日の出前が一番寒い、と言うのは本当で、朝6時半頃はキーンと冷えた。

この取材、ずっとかくれんぼ状態だ。
カメラマンのキッチンさんが、レンズを向けた方向でぼけーっと立っていることしばし。
目があって、お、ごめん、と逃げるのだけど、なにせだるま状態で動きもとろくなってくる。
キッチンさんがカメラを向ける店主の女将さんが、これまたフットワーク軽く、
商売をやるというのは、こういうことなんだ、と感心してしまうくらいなのだが、
それを追って小走り気味のキッチンさんと、そのレンズの中に移りこまないように逃げる私と編集さんで、
なんだかずっと、かくれんぼだか追いかけっこだかを繰り返しての、一日だった。
朝4時半から、午後2時すぎまで。
私は見逃したくないし、言葉を聞き逃したくないので、
なるべく女将さんの近くにいたい。
だから、取材の日はカメラマンとのせめぎ合いみたいになる。
それも、取材の醍醐味か。

築地場外市場は、邦人客で溢れかえっていた。
まさかここまでとは思わなかったので、びっくりしてしまった。

金魚のフン、みたいに女将さんを追いかけ回しての取材。
それを受け入れてくださったお店の皆さんと、なにより女将さんに感謝。
ありがとうございました。
いい取材だった。
築地場外市場という、特殊な場所ならではの人間関係が本当によく感じられた。

取材の後、ここ数日というもの、
朝7時に目が覚めると、
ああ、女将さんはもう箱詰めした商品の第一便を運送屋さんに運んだ後なんだな、
ひと仕事終えたんだなあ、と布団の中で思って、頭が下がる。(寝てる状態だけど)
あそこで働くみなさん、何時に寝てるんだ?
何時に起きているんだ? 
ホントに、心の底から凄いと思う。

私はたった一日のできごとを、いつまでも噛みしめているわけだけれど、
築地の人々は、毎日毎日、あの場所であのペースで生きているわけで、
なんだか、スピード感が違う。
ワタシなんて、かたまった体が、まだ戻らない・・・

この日の様子は、5月末発売の「暮しの手帖」で。












# by naomiabe2020 | 2025-02-10 11:19 | ライターの仕事 | Comments(0)

おべんとうのひと

すっかり初詣に行くのを忘れてしまった。
卒論がヤバすぎる、とあせる娘は、
ばたばたっと、帰ってしまった。

ふたりきりになった食卓は、やっぱり寂しい。
「私さ、ヨウが帰省してくれると嬉しいんだけど、
会えたその瞬間から、帰っちゃう日に向けてカウントダウンが始まる気がして、
どんどん寂しくなっちゃうんだよねー」と言う。
なんて、ネガティブ母。
そうしたら、サトル君が言った。
「あ、それってオレの弁当と同じだ」
え? なにそれ?
「なあちが弁当を作ってくれたりするとさ、
食べ始めた瞬間から、さみしくなるんだよ。
終わりに向かっていくじゃん。それでさ、最後はフィニッシュをどうしようか考える。
まあ、いつもご飯でしめるってことになるんだけど」

・・・・よくわからん。

みなさま、今年もよろしくお願いいたします。
良い年にしましょうね。




# by naomiabe2020 | 2025-01-03 22:23 | 日々のこと | Comments(0)

アイヌプリ

昨年の秋、おべんとうの取材で北海道へ行った。
猟師のシゲキさんに、アイヌの聖地みたいな場所に連れていってもらった。
その日、鹿を撃つことはなかったけれど、
木に生えていた「しいたけ」は見つけた。
「手ぶらじゃあ、帰らない」と言って、シゲキさんはホクホク顔だった。

取材をすべて終え、「じゃあ、これで」と別れる寸前のこと。
「1月にANAの飛行機に乗る予定ってあります?」と、何気なく聞いた。
「翼の王国」の1月号に掲載予定だったからだ。
そうしたら、シゲキさんがこう言った。
「来月11月には、飛行機に乗るんだけどなあ」
「どこへ行くんですか?」
「東京映画祭に呼ばれていて」
「・・・・・映画祭?」
「うん、レッドカーペットを歩いてくる」
へえ? えー??? 

なんとまあ、映画の主演者なのだった。
アイヌプリ_c0402074_21244644.jpg
アイヌプリ_c0402074_21250653.jpg
アイヌプリ_c0402074_21583023.jpg
昨年の年末、渋谷の「ユーロスペース」で「アイヌプリ」を観てきた。
カッコよすぎるよ。シゲキさん。




# by naomiabe2020 | 2025-01-03 22:10 | 日々のこと | Comments(0)

フリーライター阿部直美のブログ。カメラマンの夫とともに、「お弁当」を追いかけて日本全国を旅しています。日々のちょっとしたことを綴るブログです。


by 阿部直美