私が小学生の時、アイドル全盛期だった。
ピンクレディの振り付けを真似して躍る男子を見て、みんなで笑った。
女の子たちは、聖子ちゃん派か、明菜派か。
「ねえどっち?」と聞かれた。
たのきんトリオもいた。
マッチか俊ちゃんか。(よっちゃん派は、しぶい、と言われた)
私はしらけた子どもで、アイドルには興味がなかったのだ。
きゃーきゃー騒ぐ気持ちは、全然わからなかった。
でも、ある時、歌を聴いて、いいなと思った人がいた。
さだまさし。
「関白宣言」だった。
だからと言って、「さだまさしがいい」とは周りに言わなかった。
馬鹿にされそうだから。(すんません、さださん)
昨日、「プロフェッショナル」にさださんが出ていて、
子どもの頃のことを思い出したのだった。
「関白宣言」は、1979年にレコード発売ということなので、
私は小学3年生くらいで聴き、まっすぐに「いいなあ」と思ったということか。
あの歌が、女性蔑視とかなんとか批判する人がいたことも、子どもながらに知っていた。
それには納得できなかった。
全然、女性蔑視じゃない。ちゃんと聴いてよ、と思った記憶がある。
私には、あの歌を地でいく父がいた。
「俺より先に、寝てはいけない」をそのまんま、我が家は実践していた。
早く寝たいのに、寝られない。
父が無事に就寝できるまで、
いびきが響いてくるまで、こっちは、おちおち眠ることもできなかった。
近所で騒音が起こらないか、
テレビ番組で父を怒らせるような話題を提供しないか、
はたまた、よくわからない地雷を踏んで突然父が怒り出さないか、
母が、何か言って父の機嫌を損ねないか、
いつだって、気を張って見張っていなくちゃいけなかったから。
マッチョな男の人が、あの歌を歌っていたら、また違ったかもしれないなあと思う。
好きにならなかった気がする。
さだまさし、が良かった。
あの見た目。気弱そうな(すみません)細身のさださんが、
「宣言」しているところ。
ひょうひょうと、歌っているところ。
最後に「お前のおかげでいい人生だったと俺が言うから」
に至っては、小学生なのにじーんときた。
「家族」を歌う歌は、ほかに聴いたことがなかったのだ。
「恋愛」はもちろん興味はあったけれど、
子どもの私には、もっと切迫したものとして「家族」や「夫婦」があった。
それをストレートに歌っているから、びっくりしたのだ。
あれだけヒット曲があっても、今も新曲にこだわって、
必死に絞り出すようにして曲を作っているさださんは、本当に素敵だった。
窓の外の雪景色を見ながら、
「関白宣言」を改めて聴いた。
つづいて、「防人の歌」。
戦争と地震被害の下にいる人たちのことを、思う。
私には、静かに祈ることくらいしかできない。